雑木林
□暗闇の中の、君
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白澤は神獣である。
白澤には、回復能力というものが備わっており、何かしらの傷なんかは、早くて数秒もあれば消えるーこの場合治ると言った方が正しいーのである。
鬼灯はそれを考えていた。
あの神獣が、治らないものを抱えている。
物理的な傷ではないようだ。
ではもしや、呪いの類だろうか。
考えてもわからず、しかし薬を貰ってもいないので帰るわけにもいかず、店でうんうん唸っていると、程なくして桃太郎が戻ってきた。
「すいません、薬ですよね。今、作りますね。」
「お願いします。」
お互いなんとも言えない空気が流れていることを感じつつ、それぞれの事をする。
桃太郎は薬を作り、鬼灯は兎を撫でる。
「お待たせしました、出来ました。」
「いえいえ、ありがとうございました。…白澤さんに、お大事に、と。」
鬼灯は珍しく、心配そうな表情を見せた。
桃太郎も、それに驚いたが、ありがとうございますとだけ言っておいた。
鬼灯が帰り、桃太郎は片付けを始めた。次の薬の準備をせねば、と薬草棚を眺める。
「…、お大事に…か。」
鬼灯の言葉を繰り返す桃太郎。
聞いたら、白澤は喜ぶだろう。