雑木林
□こころ
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大倶利伽羅 廣光は辟易としていた。
今の今まで、自分の後押しをしてくれ、尊敬していた叔父に裏切られたと気づいたのは、つい最近だ。
なぜ、とか、どうして、といった言葉が胸の内に溢れては消え、声にはならず、ただただ、呆然とした。
そして、信頼の2文字とともに叔父は大倶利伽羅の中から消え失せた。
後に残ったのは、自分が騙されていたことにも気付けなかった惨めさと、悔しさ。
このまま、消えてしまいそうだった。
それでもいいかと、思いかけていた。
そんな時だった。
長谷部が、声を掛けてくれたのは。
長谷部とは同じ出身で、医者夫婦に引き取られるまではよくつるんでいた。
そして今回も、俺の話をどこからか聞いたのだろう、心配して、声を掛けてくれた。
その時俺は、心の底から、嬉しかった。
なんだか、やっと安泰を手に入れたかのような、安らぎの中にいるような、そんな感覚だった。