雑木林

□こころ
2ページ/2ページ

大倶利伽羅 廣光は辟易としていた。

今の今まで、自分の後押しをしてくれ、尊敬していた叔父に裏切られたと気づいたのは、つい最近だ。
なぜ、とか、どうして、といった言葉が胸の内に溢れては消え、声にはならず、ただただ、呆然とした。

そして、信頼の2文字とともに叔父は大倶利伽羅の中から消え失せた。

後に残ったのは、自分が騙されていたことにも気付けなかった惨めさと、悔しさ。

このまま、消えてしまいそうだった。
それでもいいかと、思いかけていた。

そんな時だった。
長谷部が、声を掛けてくれたのは。

長谷部とは同じ出身で、医者夫婦に引き取られるまではよくつるんでいた。
そして今回も、俺の話をどこからか聞いたのだろう、心配して、声を掛けてくれた。

その時俺は、心の底から、嬉しかった。

なんだか、やっと安泰を手に入れたかのような、安らぎの中にいるような、そんな感覚だった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ