リスのコラさんとハムスターのロー シリーズ
□リスのコラさんとハムスターのローとランプの妖精
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今日もぽかぽかいいお天気で、珍しく早起きをしたローが、既に巣穴から出ていったコラソンの為に掃除をはじめます。
昨日、コラソンがトウモロコシを取ってきてくれると言っていたので、ローはコラソンの帰りを楽しみに待っていました。
「ただいまー。トウモロコシ取ってきたぞ!」
「お帰り、コラさん。お疲れ様。トウモロコシ、ありがとう」
ほっぺにぎゅうぎゅうとトウモロコシを詰め込んで帰っていたコラソンは、小さなトウモロコシをふたつ、手に持っていました。
「これな、ヤングコーンって言うらしいんだ。ローと一緒に食おうと思って、ふたつ持ってきた」
コラソンが持っていたヤングコーンを受け取ったローは、葉っぱで作ったテーブルにヤングコーンを置きます。
魔女のおばあさんからもらったドライフルーツと、ナッツを一緒に並べたローは、コラソンがテーブルにトウモロコシの粒を出してくれるのを待ちました。
「ローはちっこいから、いっぱい食って大きくなれよ」
テーブルの真ん中にトウモロコシの粒を出したコラソンが、ローの前に自分よりも多くのトウモロコシの粒を置いてあげます。
「コラさん。おれ、こんなに食えねェよ…」
ローはそう言いながらも、コラソンが自分の為に色々してくれることが嬉しくて、ニッコリと笑いました。
「さ、食おうぜ」
「頂きます」
コラソンが出を合わせると、ローもコラソンの真似をして手を合わせました。
ヤングコーンを初めて見たローが手を伸ばして、ひと口齧ってみます。
「んまいっ! コラさん。これ、んまいっ!!」
「良かったな。足りなかったら、おれのも分けてやるから、いっぱい食えよ」
美味しそうに食べるローを見て、コラソンは嬉しくなりながら自分もヤングコーンを食べはじめました。
小さなローは、ヤングコーンを半分とトウモロコシを少し食べただけでお腹いっぱいと言って、顔を洗いはじめます。
コラソンが食べ終わると、ローはコラソンの顔も洗ってあげました。
「そうだ。この森をずっと奥に行ったところに、洞窟があるんだけどよ。最近、その洞窟に蓋がされちまったんだ」
「蓋が? 誰が蓋したんだ?」
ローはコラソンの言う洞窟が何処にあるのかも知りませんが、洞窟がどんなものかは知っていました。
「森の動物が言うにはよ、盗賊って人間がキラキラのお宝をいっぱい隠してるらしいんだ。だから蓋したんじゃねェかって」
「キラキラのお宝って、何があるんだ?」
コラソンが大事にしている大きなドングリも、毎日磨いているのでとてもキラキラしています。
けれども、そのドングリよりもキラキラしているのなら、ローはどれだけキラキラしているのか見たくなりました。
「金貨…は、泉の女神が持ってるから見たことあるだろ? そんなんじゃなくて、魔法のランプってやつが、すっげーキラキラしてるらしい」
「魔法のランプ?」
ランプは知っているローですが、魔法のランプはまだ知りません。
いつだってローの知らない世界の話をしてくれるコラソンに、ローはわくわくしながら話の続きを聞きます。
「魔法のランプの中には妖精が住んでいて、ランプを綺麗に磨いたら、お礼にみっつの願いを叶えてくれるそうだぞ。行ってみたいか?」
「行きたいっ! コラさん、連れて行ってくれ」
前のめりになって行きたいと言ったローに、コラソンはクスッと笑って背中を見せます。
「ほら。尻尾に座って、落ちねェようにしっかり捕まっとけよ」
「うん」
ローはコラソンの背中に捕まって、ふさふさの尻尾にちょんっと座りました。
ローが尻尾に座ったのを確認したコラソンは、巣穴から出て木から木を伝って走ります。
途中にあった花畑で、花の蜜を飲んで休憩をしたコラソンとローは、洞窟に向かってまた走りました。
「着いた。どうやったら蓋が開くんだったかな。楽しそうに踊るんだったか…」
「楽しそうに踊ったら開くのか?」
洞窟に着いたコラソンとローは、入り口を塞いでいる目の前の大きな岩を見上げて悩みます。
「楽しく踊っていたら、気になった中の人間が蓋を開けて、そしたら太陽が出てくるって」
「コラさん。太陽はもう出てるぞ?」
ローは空を見上げて、暖かな光を送る太陽を指差します。
「あれ…? 開けゴマって言うんだったっけ?」
コラソンが頭を抱えると、大きな岩が音を立てて動きました。
「開いたーっ!」
急いで洞窟の中に入ったコラソンとローは、沢山のお宝を見て口を大きく開きます。
「キラキラ…いっぱいだな」
金色のキラキラや銀色のキラキラ、赤や緑のキラキラなど、数えきれないほどのお宝に、宝石を珍し気に見ていたコラソンがローに手を引かれてランプの前まで歩きました。
「コラさん、このランプか?」
「綺麗にしてみたら解るだろ」
あまり汚れていないランプでしたが、コラソンとローは自分たちの身体の倍以上はあるランプを、小さな手で一生懸命に綺麗にしました。
「お呼びでございますか、ご主人様」
「出たーっ!!」
「でっけー!」
ランプからもくもくと煙が出ると、煙の中から青くて大きな妖精が姿を見せます。
コラソンとローはお互いに顔を見て、うんと頷きました。
「おれたち、願いを叶えて欲しくてやって来たんだ」
「願いはみっつまで、何でも叶えてあげますよ」
妖精はコラソンの声に応え、お腹に手を当ててお辞儀をします。
「じゃあ。ひとつ目は、おれとローがずっと幸せに暮らせますように。ふたつ目は、おれとローがずっと健康に暮らせますように」
ふたつ目までを妖精に伝えたコラソンは、ローに最後の願いをどうぞと言って、妖精の前に背中を押してやります。
「おれは…。みっつ目の願いは…。おれとコラさんが離れずに、これからもずっと一緒にいられますように」
ローが最後の願いを妖精に伝えると、コラソンが笑顔でローに抱きついて沢山キスをしました。
「ローっ! 愛してるぜ! ずっと一緒だ!」
妖精はコラソンとローを見て、ニッコリと微笑みます。
「願いは確かに叶えました。では、ごきげんよう」
もくもくと煙が妖精を包んで、ランプの中に消えていきます。
カランッと小さな音を立てて閉まったランプを見て、コラソンとローは嬉しそうに抱き合いました。
「じゃあ、ちょっとだけ何かもらって帰ろうぜ」
コラソンは赤い石をいくつかと、ローは白い石をいくつかほっぺに詰めて、洞窟から出ました。
「あー…。鼻が伸びちまった木の人形…。アイツの鼻を戻してくれって願ってやるの忘れてた」
巣穴に戻ったコラソンは、森の中でおじいさんと一緒に住んでいる木の人形のことを、すっかり忘れていたと言って笑います。
「また今度、何か願いを叶えてくれるのがあったら、お願いしてやろうぜ」
ローはそう言って、洞窟から持って帰ってきた赤い石と白い石を、コラソンが作ってくれた木の箱の中に大切にしまいました。
おしまい