時神の三角形

□第5章 
3ページ/3ページ

一同は壁をくぐり抜けたその先に広がる光景を見て思わず立ち止まった。
「ここは…」
一同を驚かせたのは、まるで物語の世界に迷い込んだかのような村の様子であった。
「囚われのお姫様とかいそう☆」
無邪気な発言をする『超能力者(エスパー)』。
「京子の家の庭みたい☆」
「どこが(バシッ)。言いたいだけでしょ」
「い、痛いよ〜」
京子の逆鱗に触れ、火の粉を浴びる比奈。
「嗚呼、気の毒に…((哀」
「アラ…」
哀れみの視線を向ける一同。
「それはともかく、何したらいいんだろ―って、何か来た〜!」
莉央が叫び、皆慌てて道の両端に寄った。その直後、巨大な馬車が先程一同の立っていた辺りを恐ろしい速さで横切っていった。
「ふぅ、助かった…」
「今のは一体何?」
「I don’t know」
「英語で喋るな」
口々に言い合う例の7人。
「ん〜…そうだ!香乃に訊いてみようよ。きっと教えてくれるよ」
京子が提案し、マイクのスイッチを入れた。
「香乃〜、聞こえる〜?」
「―いらっしゃいませ、ご注文は?」
「チーズバーガー…って、違うよ!何言ってるの!」
「ごめんなさい…何?」
「ステージに来たのはいいけど何したらいいのかわかんなくて。教えてくれない?」
「あ〜。近くに看板みたいなの、ない?」
「あ、あった!」
「その看板の地図を片眼鏡越しに見て、緑色に光っている地点を目指して移動していって。まあ、結構遠いから時間かかると思うけど。途中で誰かに泊めてもらうか何かしてね」
「なるほど。ステージのゴールを目指して進んでいったらいいのね。わかった。ありがとー」
「待って!まだ切らないで」
通信を切ろうとする京子を香乃が焦ったように止めた。
「よく聞いて。刺客は武器を持ってるし、ゲームを進めていく中で更に武器を増やしていくと思う。だから、何も持たずに無防備だったら危険。最低限自分を護れるような物は持っておいた方がいいと思う。皆に伝えておいて」
「わ、わかった…」
通信が切れた。
「どうだった?」
「あ、えっと。そこにある看板に地図が載ってるんですけど、それを片眼鏡越しに見て緑色に光っている地点を目指していけば次のステージに進めるみたいです」
「へぇ。じゃ、見てみよ〜」
莉央がツーステップで看板に近づく。
「ん〜…何で見えないんだろ」
「電源入れてないんじゃないの?」
「あ、ほんとだ」
一同は地図を見た。
「…って、遠っ」
「全くだ」
目的地は現在地と端と端の位置にある丘の頂上だったのだ。
「あそこに行くまでどれくらい時間がかかるんでしょうか」
『万能医』が呟く。
皆、困ったように考え込んだ。その時、
「あの、皆さん旅行に来られた方ですか?」
一同に遠慮がちに話しかける声が聞こえた。
振り返ると、声の主は十代前半くらいの少年だった。
「りょ、旅行?」
「あ、違いますか?前にも皆さんのようにその看板の前で立ち尽くしている旅行者がいたものですから。てっきりここに旅行に来られたのかと」
「実はそうなんです。それであの丘の頂上まで行きたいなと思ったんですが、そこに着くまで結構時間がかかるだろうと思って。1日じゃ行けないですよね?」
莉央が尋ねた。
「そうですね。2、3日はかかるかと」
「そうですか…。では、この近くに泊まれる所などがあれば教えていただけませんか。出来ればあの丘に行くまでにある所も」
「えっと…あっ、僕の家の隣に宿屋があります。この人数なら大丈夫、だと思います。丘までの道にある所はちょっとわからないですね…。明日までになら調べられると思います。それでよろしいですか?」
「有難うございます。わざわざすみません」
「では、とりあえず宿屋まで案内します。ついてきてください」
歩き出した少年に続いて、一同は宿屋へ向かった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ