七つの殺意の器

□第3章
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かつての同僚、美衣に捕まり、僕は訳がわからないまま晩餐会の手伝いをさせられる羽目になった。
「侍従長!宰相への食事が間に合っておりません!」
「えっ!琉南、芥斗、急いで!超特急!」
「「はい!!」」
侍従達は皆、忙しそうに動き回っている。僕も調理の手伝いをしたり、出来上がった料理を運んだり、客に道案内をしたり、美衣が床に零したお酒を拭き取ったり、美衣がぶつかって穴があいた壁の修繕をしたりと目が回るほど働いた。
三百年も経っているのに案外体に染み付いた仕事の勘は失われていないものだ。他の侍従達も同じなのだろう、そのおかげで晩餐会は滞りなく進行していたが、さすがに侍従長や他の同僚に話しかける時間はなかった。
それにしても、これは一体何のための晩餐会なのだろうか。客の中には見知った顔も多くあったが、肝心の主催者の姿がどこにも見当たらなかった。そう、梨絵だ。今までの流れから考えてこの晩餐会を開いたのはおそらく彼女だろうが、そうなるとこうして多くの人が集まっている理由が説明できない。
梨絵は『悪ノ娘』_自国の民にも隣国にも嫌われている存在だった筈だ。王国が無き今、皆が彼女の御機嫌を伺う必要もない。
それなのに、なぜ…。
「莉央!まだ終わってないワヨ!まだひと仕事残ってるワヨ!」
美衣が叫んでいる。
(『ひと仕事』…?)
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