七つの殺意の器

□第5章
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瑚桃国_世界の最東端に位置するこの島国は、JI811年頃までは外国との交流を基本的に制限しており、それにより独自の文化を形成していた。

ただし例外として一部、外国人の居住を認める地域も存在していた。
南部にあった「咸ノ島」もそんな外国人居留地の一つであり、島の中心地にある「蓮香坂」周辺では多くの外国人が瑚桃国人に混ざって暮らしていた。

棐京子は蓮香坂の片隅で仕立屋を営む女性だった。
気立ての良さと確かな腕で、近所でも評判の娘だった。

外国人の多い咸ノ島において、京子の栗色の髪と白い肌が不思議がられることは大してなかった。
彼女の祖先に外国人がいる事を、皆知っていたからだ。

しかし、京子が昔、全く違う見た目の黒髪の女性だった事を覚えている者は、なぜか一人として存在しなかったのである。
皆、その事を忘れてしまっていたのだ。
まるで催眠術にでもかかったかのように_。

ある時、呉服屋の主人、三倉海の女房であった瑪留が、蓮香坂で全裸死体となって発見された。鋭利な刃物で胸を一突きにされていたという。
それをきっかけに、三倉家の人々は次々に殺されていき、最後には主人の海も同じ運命を辿った。

恐ろしき連続殺人_下手人として捕らえられた女性は打ち首となり、その首は見せしめとして、三日間、晒しものにされた。

彼女の首を刎ねた刀もまた、『殺意の器』が姿を変えたものだった。
だが、その事実を知る者は少ない。
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