七つの殺意の器

□第7章
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蒼龍涼香は生まれたのは千年樹の森にある廃屋だった。

不貞の子として母親に密かに育てられた。
町で通りすがる大人の男性を見ては、そこにまだ見ぬ父の姿を重ねていた。

成長するにつれて涼香の心は歪んでいき、悪行に手を染めるようになる。
やがて彼女は仲間と共に捕まり、裁判で死刑を宣告される。

死刑の免除と引き換えに、涼香は特殊部隊『ST』の狙撃手となった。
一般市民として生活する傍ら、裏では組織の命に従い対象を殺していく事になったのだ。

ある時、涼香に恋人ができた。
しかし彼は無実の罪で捕まってしまった。

強制収容所から脱走した恋人を、涼香は匿った。
組織から下された新たな命は、その恋人を殺す事だった。

涼香は恋人を殺し、その後自らも後を追おうとした。
だがこめかみに弾丸を撃ち込んでもなお、彼女が死ぬ事はなかった。

契約者を殺せるのは、同じく器を持った者だけなのだ。
彼女はその時、初めて自分が契約者である事を知った。

涼香は恋人の弟に説得され、『ST』の長『MASTER』への復讐を誓う。
内乱に乗じて彼女はMASTERの部屋に乗り込んだ。

憎悪の器、銃弾。
それはMASTERの眉間を撃ち抜いた。

MASTERの正体は、涼香の父親だった。


混乱の中碧林国内で台頭し始めたのが、かつての『JF』組織のメンバーが結成した_党だった。
投獄されていた涼香が恩赦により釈放されると、_党は民衆に人気のあった彼女に副党首の座を与えた。その後、党首奥山海斗が失踪すると、涼香は_党の新たな党首となったのだ。
やがて、国内外の支持を集めた_党は碧林国の政権を奪取した。
独裁者となった涼香が碧林国軍に命じたのは、李楓王国改め李楓共和国への侵攻だった。
この行為によって碧林国はJFを除名されたが、碧林国軍が侵攻の手を緩める事はなく、李楓共和国制圧後には火巡国及び瑚桃国と軍事同盟を結んだ。
蒼爛国を筆頭とするJF軍はこれに対抗し、碧林国の大規模な包囲作戦を画策する。中立を守っていた紫苑国もJF関連諸国への支援を表明した。瑚桃国が紫苑国へ宣戦布告した事により、戦争の火種は世界中に拡大した。
JF軍の反撃により窮地に陥った碧林国は、涼香総統の元で秘密裏に開発を行っていた新兵器_『責』の製造及び実践投入を決断する。
実験に放たれた試作型『責』は、千年樹の森を完全に焼き尽くした。
次に碧林国は紫苑国に『責』を放ったが、照準ミスによりそれが落ちたのは瑚桃国だった。それによって咸ノ島は灰の大地になった。
異変に気付いたJF軍が碧林国を包囲した時にはもう既に、無数の『責』の照準が世界全土に定められていた。
そして_。
涼香は『責』の発射装置に銃弾を放った。
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