陽だまり

□人間とソフトクリーム
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ある日ななしんはオロチに連れられて今から60年後の人間界へやって来ていた。


普段ななしんは過保護な過保護な土蜘蛛のせいもあり、あまり遠くへ出掛けることは無かったが、今回はオロチも一緒に着いていく事を条件に人間界へ行ける事になったのだ。





ちなみに土蜘蛛も同行する予定だったが、突然予定が入ったので、オロチとななしんは二人で人間界へ行くことになった。




ぶつぶつと文句を呟く土蜘蛛はなかなか恐ろしかったと言う。(ふぶき姫談)









「うわぁ!オロチ、人間さんも妖怪さんもいっぱいいるよ!」
「ねえねえ、あのフサフサしたやつなに?」(それは猫よぉ?by えんらえんら)
「うわぁ!あの象さんみたいなのなぁに?」(それは滑り台だby オロチ)






ななしんはまだまだ幼く、さらに人間界は見たことの無い未知の世界。
好奇心がMAXに達したらしく、オロチの手を握りつつもキョロキョロと辺りを見回し、きゃあきゃあと騒いでいた。


「まぁななしん、時間はまだある、そうはしゃぐな。怪我をするぞ?」
「はぁーい!!」




そう言いつつもななしんは目を輝かせて返事をするので、オロチは内心ななしんが勝手に何処かへ行かないかヒヤヒヤしていた。





とそこへ、






「あ!オロチ!珍しいね、街中を歩いてるなんて」
「お久しぶりでうぃす!」



ついこの前の戦いでお世話になり、友だちになった普通の少年こと天野景太と、その執事のウィスパーがやって来た。




ななしんは二人(一人でと一匹)の声に驚いたのかオロチの後ろにササッと隠れ、ひょっこりとオロチの足元から顔を出してケータとウィスパーの顔をじーっと見つめていた。



そして、ポツリと呟く。







「美味しそうだなぁ…………白いふわふわ」






ななしんの声が聞こえたオロチは思わず吹き出す。






「え、えぇ!?いきなりどうしたの!?」


普段、滅多に自分達の前で笑わないオロチがいきなり吹き出したのでケータとウィスパーも声をあげて驚く。


「ッ、ククッ…ななしん、こいつ等は俺の友達だ。だから怖くない」

オロチはそう言うとななしんの背中をソッと押し、自己紹介をするように促す。

「うっ、うん。あの、わたし、ななしんって言うの。えっとよろ、よろしくね!!」




人間と話した事が無いため、オロチの服の袖を握りしめながら緊張した様子で、ななしんは自己紹介をした。

そんなななしんの頭をオロチはソッと撫で、ケータ達に早くお前らも自己紹介をしろ、 と目で訴えた。




「うん、俺天野景太!よろしくね!」
「私はケータ君の妖怪執事、ウィスパーでございます。宜しくお願いしますでうぃすー!」



二人の笑顔に心を開いたのか、はたまた温かい雰囲気が気に入ったのか。ななしんはすぐにオロチの後ろから出てきた。




「ソフトクリーム!」



そしてウィスパーの頭にしがみつく




「え!?ちょちょななしんさん!?」

「ウィスパー、ソフトクリームみたい!!美味しそうだね!」

「えぇっと、それは誉め言葉として受け取って宜しいのでしょうか?」



「ほめ、とば……………?それ、何味?」
「ウィスパーはソフトクリームでは無い」
「そうなの?でも、ウィスパー美味しそうだよ!」
「えっと、……………あ、ありがとうございま…………す………うぃす……」




ななしんにまたもや抱きつかれたウィスパー。
抱きつかれるのは良いが、目の前にいるSランク妖怪の視線が怖すぎる。



「ウィスパー、なつかれてるね!」
「うぃっす(殺気!殺気が怖すぎる!)」
「ななしんそろそろ帰るぞ」


ななしんに抱き付かれたウィスパーが羨ましくなったのか、オロチはななしんの手をソッと握る



「はーい!またね!ケータ、ウィスパーっ!」



「うん!また来なよ、今度は俺の友達も紹介するからさ!」
「うぃっす!お元気で!!(殺気が消えない…………)」






二人の言葉にななしんはもう一度振り返り、大きく手を降るとオロチと共にどろん、と消えた。











(オロチ!ソフトクリームあげるね!!バニラと苺、どっちがいい?)
(ななしんの好きな方で良いぞ)
(じゃあ、どっちも半分こしよ!)
((なっ、…………ななしんと、間接キス、だと………!?))

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