お祝い!

□年に一度の…
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《やあやあ皆、優だよ
今日は皆のよく知る優木の誕生日》

「誰に向かって話してるの優
ほら、優木達に気付かれちゃうでしょ」

《ごめんごめん、読者の皆に状況を説明しなきゃと思ってね》

そういうことはこっちでやるから大丈夫だぞ優

そんな訳で、現在PCの中で朝御飯を用意している優木一行の泊まった部屋に、優と奏は潜んでいた

お風呂場に

夜しか基本使われないここに、テレポートでやって来たのだが、優木や優志に気付かれない筈がないことをこの二人は忘れていた

判っていて放置している二人も二人だが…


《先ずは優木のポケモン達に誕生日だってことを気付かせなくちゃね》

優の念力で鞄から出されたトレーナーカード
勿論誰にも気付かれない様に

砂塵『あれ、これって』

最初に気付いたのは砂塵だった

眠そうに目を擦ってそれを拾い上げる

砂塵『…主ー
トレーナーカードが鞄から出てたけど』


「ん?
誰が出したんだ
悪いけど戻しておいてくれ」

砂塵『はーい』

朝御飯の準備で手が離せない優木は、砂塵に軽く声を掛けて戻っていった

淡里「どうした?砂塵」

砂塵『たんりん、主のトレーナーカードが鞄から出てたんだ』

淡里「ふむ
よく見たら、下僕の誕生日今日じゃないか?」


七夕の短冊を書く、優木以外の全員の手が止まった

焔駆「ほ、本当に?」

素早くトレーナーカードを引ったくった焔駆がその日付を見て呆然とした

焔駆「本当だわ…」

優志「ああ…だからあいつら…
七夕だからじゃないんだな」


「?」

優志の言葉に当然首を傾げる仲間達

《やあ皆、元気にしてるかい?》

優志「出たなストーカー」

《ひ、酷い…!僕は君達が心配で見ているのに…!》

優志「それをストーカーって言うんだ」

《そんな…!
ってこんなこと話してる場合じゃないよ》

そう、こんなことを話している間にも、優木に気付かれるのは時間の問題

優志「とは言ってもお前が来てるのはバレバレだけどな」

《あら》

「じゃあ私も?」

優志「…いや…人間だからなあ」

《ああ、そっかぁ
僕の居場所はお互い能力で判っちゃうんだっけ》

今思い出したのか

飛由「それで?優木の誕生日に何をしようと思って出てきたんだ?」

《よくぞ聞いてくれました
サプライズです!》

絆『サプライズかあ、楽しそう』

ぴょんぴょん跳ねて楽しそうにする絆
他の皆も何だか嬉しそうだ

翡翠「それで、具体的に何するの?」


「何か盛り上がってるところ悪いけど、朝御飯出来たよ」

優木の登場に驚くメンバー、その様子に首を傾げながら、優木は何故かここにいる優と奏に目をやった

「ストーカー達の分はないよ?」

《ひ、酷い…!
そんな風に育てた覚えはありません…!》

「育てられた覚えもないけど」

最も過ぎて何も言えない優

「でも優木をこーんな一人前に育てたのは私だけどねー」

家事全般に護身術までー
ニヤニヤ笑いながら言う奏に、今度は優志が口を開いた

優志「色々教え過ぎて性別詐欺になったのは誰のせいだったかな」

「う"…」

「ほらほら、優にいも早くご飯食べなよ」

漸く食べ始めた仲間達を見て、優木も席に着く
実の父と母を放置している訳だが、当の二人は既に食べてきたらしく、特に気にする様子もなくのんびりと優木達の様子を見ていた

しかし…

「…逆に落ち着かないな…」

「何ー?見られてると興奮しちゃうって?」

「そんなこと言ってないだろ…(汗)」

何てことを言うのかこの人は

雷鳴「お嬢が落ち着かないのはオイラのせいだろ?」

「そっちじゃないな(即答)」

雷鳴「ひでぇ」

焔駆「じゃあワタシか」

朝日「いえいえ私」

翡翠「いや、翡翠」

「皆いつもこっち見てるだろ」

気付いてたんだ…

こんな会話を聞いて、奏がクスクスと笑いだす

「優木もいい仲間達に恵まれたわね」

「…まあそうだけどね」

何故か変態が多いけれど

「それで?何しに来たの?」

《ヒント、今日は何の日だー》

「?七夕?」

「うん、まあそうね」

七夕だけでわざわざ来る何て変なの
そんなことを思いながら食べ終わった食器を片付け始める

《晩御飯一緒にどうかと思ってさ
お土産も持ってきたから》

「お土産何てどこに…」

《あ、ごめん
家の冷蔵庫で冷えてるからさ》

後でテレポートで持ってくるからー
何ともお気楽な優の言葉に、仲間達の分の食材が既に集めてあるのにと悪態を吐きそうになる

「ね?優木、お願い」

「…判ったよ、食材追加で買ってくるから」

《やったぁ!》

全く困った両親だ
口に出さずに苦笑いだけして誤魔化すと、優木は出掛ける為に鞄を持った

飛由「俺もついてく
荷物、一人じゃ大変だろ?」


「助かるよ」

PCから少し離れた所に行かないといけないから、二人分とは言え大変
飛由が名乗り出てくれて素直にお礼を言った

月光「行ってらっしゃいマスター」

爆羅「行ってらっしゃーい」


そうそう、今更ですが時間軸関係無しな滅茶苦茶な設定になってますよ
爆羅は優木が人間じゃないこと知ってるし(本編ではまだ知らない)そもそもあれからまだPCに行ってないし…

そして時間軸と言えば、優木君の設定が出来た日が今日なんですが、もう三年なんですよねー
つまり順当に年を取っていけば、優木君はもう19歳ということに…

「何メタ発言してんだ」

はい、すみません
お話に戻りましょう

「さて、優木が行ったところで…」

淡里「上手く厄介払いしたな」

砂塵「ちょっと可哀想だったなぁ」

《まあまあ、今夜の打ち合わせをするよー》





飛由「お前、今日が本当に七夕だけだと思うか?」

「え?だって他に何があるのさ」

飛由の言葉に首を傾げる

こんな覚えやすい日が誕生日だと言うのに、優木が惚けている様子は微塵も感じられなかった

飛由「…いや、いい
愚問だったな」


十年間祝われなかっただけで、記憶から誕生日というものを抹消してしまったのだろうか
昨日までの自分の年は、把握している筈なのに





夜、七夕の飾りである笹の葉が風に揺らめく

PCのジョーイさんが、わざわざ全部屋に用意してくれたその笹に、優木達が書いたお願い事が括り付けられている

同じく風に揺らめくその紙に、個性溢れる願い事

そして、年に一度の優木の誕生日

ここまで何食わぬ顔で過ごしていた仲間達も、流石に晩御飯が近くなってそわそわし始める

爆羅「楽しみだなっ」

絆『ねっ』


忙しく晩御飯を用意している優木と奏を他所に、優と仲間達はサプライズの用意を着々と済ませていた


「出来たよー
何してるの?」

《え?秘密秘密♪》

「ほら優木、まだ箸が出てないわ
手伝って」

「はーい」

慌ただしくて言及出来ないのを良いことに、作業は進んだ


「それじゃあ、頂きます」

奏の言葉を合図に、元気な声が響く
食事の時間が始まった

「さて、食事も始まったことだし
今日というイベントに相応しいことをしようか」

まだご飯に手を付けずに、擬人化した優が切り出した

雷鳴「よっ!大統領!」

なんだその野次は

「ただの七夕にやることあったっけ?」

ただのというのもおかしな話だが、願い事を書いた短冊も笹に飾ったし
他にやること何て…
天の川でも見るのか?

優志「なら、先ずはいい加減」

「優木に直接言わなくちゃね」

「?」

皆が息を揃えて声を出す
優は更に、それに合わせて"お土産"を前に差し出した

『誕生日おめでとう!』

それは、バースデーケーキ
上に乗った板状のチョコには、"happy birthday 優木"の文字が

「え…え…?」

皆の笑顔とそのケーキに戸惑う

誕生日…?
誰が…?
…僕が…?

「僕が…?誕生日…?」

「そうよ」

七夕が?誕生日?

「…そういえば…そうだったような…」

優志「どんだけしっかり忘れてんだお前は」

「あはは…」

苦笑いするしかない
そして、それから少しずつ
今の状況を理解していく

大勢の仲間達が、自分に笑顔を向けている

優木が(正確には宙だが)この世に産まれ、一人の人として呼吸を始めた、17年前のこの日
決してそれは間違っていなかった

宙として生きた、たった一人だった十年間
何度、生きることに無意味さを感じたことか

でも、無意味何かじゃなかった

こうして、今大事だと胸を張って言える人達に出会って、その人達から誕生日を祝われている

「…ありがとう…」

心の底から、お礼を言った

誕生日を祝う言葉の、本当の意味は、きっと
"あなたという人が、生まれて来てくれた奇跡に、ありがとう"


優志「おいおい、泣くほどかよ」

「う、うるさい…泣いてない」

何気無い祝いの言葉だったのかもしれない
他の人達からしたら大したことじゃないのかもしれない

だけど、誕生日を祝ってくれる人がいる

優木は今、その事実があまりにも嬉しくて、顔を伏せた

「…さっ、食べよ?」

もう一度席に座って(ケーキは一旦冷蔵庫へ)今度こそ食べ始める

翡翠「でももう優木と出会って一年かあ」

「…そういえば、この時期だったね」

「…誕生日に飛ばしたから丁度一年であってる筈だよ」

「ええ!?そうだったの!?」

そう言えばその時、トレーナーカードの誕生日の所、今日になってた様な…

「結婚出来る歳だし、いろいろ丁度いいと思って」

翡翠「誕生日に出会ってたなんて…」


淡里「因みにそんな下僕は短冊に何書いたんだ?」

「…言うと叶わないって言うから言わない」

そう、今日は七夕でもある

笹に飾った願い事がゆらゆらと風で揺れる

朝日「凄くロマンチックな日に産まれたんですね、マスターは」

「あはは…そうらしいね」

今日は少しだけ雲が掛かっているものの、星空もしっかり見える

「食べたら、星見よっか」

月光「おっ、いいねえ」

年に一度、織姫と彦星が会うことを許された日
優木が、この世界にやって来た日
この世に生を受けた日

彦星が星の川を越える日に、優木は次元を越えて皆のいる世界へとやって来た


笹、短冊には"まだまだ旅が出来ます様に"

そして、仲間達のものには"もっと強くなって、大事なものが護れます様に"

"楽しい旅が続きます様に"

皆少しずつ、思うことは違うけれど
仲間皆で旅をすることを望んでいた

"ps.肉もっと食べたい"

"ps.お嬢のハートを…"

"ゆきちゃんのあんなところやこんなところを…"

個性的な仲間達と共に、明日も旅は続いていく

どこまでも行こう、共に


誕生日おめでとう、優木




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