Alice
□02
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「なあ、ひとつだけ聞いていい?」
「…はい」
「お前が俺に挑んできた理由は、お前がこの軍に入団した理由はなんだ?」
レイの問いに、兵士は一瞬戸惑う。だがレイを見据えてハッキリと答えた。
「この手でクレイドルを……クレイドルで生きる民を守りたいから、です」
レイは続きを促すように頷いた。
「赤の軍との戦いが激しさを増していく中で、いてもたってもいられなくなったんです。俺には妻も、生まれたばかりの子供もいる…だからっ…」
「…同じだな」
「え?」
「俺が戦う理由も、同じだよ」
そう言ったレイの顔に、ひどく穏やかな表情が浮かぶ。
「俺もクレイドルを、クレイドルの民を守りたい。欲張りかもしれないけど、できるなら全部を守りたい。自由に笑える今を守ることが、俺が戦う理由だよ」
そんなレイの姿を見て、リナは心の片隅で思った。レイが守りたいと言った全てのものの中に、少しでも自分が入っているのだろうか…と。
レイはすっと立ち上がり、兵士を見る。
「これから何度でもかかってこいよ。何度でも正面から受け止めてやるから。無鉄砲な奴は嫌いじゃねぇ」
レイの笑みに答えるように、兵士は一度だけ大きく頷いた。
「お見事、ボス」
「…フェンリル、その呼び方やめろ」
「お見事、ボス♪」
「セス、人の話聞いてんの?」
「…」
「ルカ、その何か言いたそうな顔やめろ」
「…ボス」
「おい」
「眉間に皺寄せんなって!イケメンが台無しだぜー?」
フェンリルが笑ってレイの眉間をぐりぐりと押す。その楽しそうな輪の中心にいるのがレイだ。リナはそんなレイに目を奪われる。
「なかなかおもしろいモンが見られただろ?今の言葉で、俺たちが戦う理由が少しはわかったんじゃないか?」
シリウスはリナの頭にぽんっと大きな手を乗せた。