Alice
□05
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「…被害は?」
「セントラル地区の建物の一部が破損。一般市民、被害者多数!」
「!」
兵士の言葉にレイの表情が歪む。
「そして…セントラル地区の見回りをしていた我が軍の兵も、負傷しました」
目を伏せていたレイが立ち上がり、声を上げた。
「黒の軍に告ぐ!ただちにセントラル地区の爆破現場まで向かう」
「はっ!」
「そして13人の幹部に告ぐ。万が一に備え、俺たち13人が軍の先陣を切る」
「ここは俺の出番だな…っと」
フェンリルが今までにないような真剣な顔でレイと向かい合う。昨日の夜と同じように、まっすぐ視線がぶつかった。
「エースが矢面に立つ。お前は指揮官だ。自分が先頭に立とうなんて野暮なこと言うなよ?」
「言わねえよ。ただ…これは喧嘩じゃねぇ。気抜くな」
「任せとけよ、相棒」
「ああ…頼んだ」
リナは自分の手が小さく震えていることに気づいた。
「これより出陣する!何があっても臆するな!行くぞ!」
「はっ!」
レイの声を合図に、一斉にみんなが飛び出して行く。次にレイは、兵舎の守りの兵士数人に告げた。
「数人は兵舎に残って、ここを守ってほしい。それと…」
レイがふいにリナへと視線を向ける。そして安心しろ、とでも言うように柔らかく笑った。
「…こいつのことも頼んだ」
「はっ!」
それだけ言い残し、立ち去るレイの後ろ姿をリナは追いかけた。
『レイ!』
兵舎の外に出たところでリナはレイを呼び止めた。レイは緩く振り返る。
『(ほんとは行かないでほしい…なんて言えない)』
言いたいことをぐっと飲み込み、リナはまっすぐにレイを見つめた。その顔は今にも泣きだしそうだ。
『…絶対、戻ってきてね』
するとレイの大きな手がリナの頭をくしゃりと撫でる。
「ばか、そんな顔すんな。お前がいるのに、戻らないわけないから」
『レイ…』
レイは手をそっと離すと、優しく笑った。
「行ってくる」
ゆっくりと城門が開かれ、レイ達を乗せた馬が一斉に走り出す。リナはその姿が見えなくなるまで見つめていた。すると兵舎に残っている兵士がリナへと声をかける。
「リナさん、数人で外を守りますので俺たちと一緒に中へ」
リナが頷き返そうとしたその瞬間、目の前で激しい閃光が走った。そして耳をつんざくような激しい銃撃音が鳴り響く。リナは思わず目をぎゅっと閉じた。
『なにっ…?』