story

□彼の傍にいれるなら(沼田慎一)
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見てしまった。勉強も運動もできる真面目な慎一くんが、他人の自転車のタイヤにカッターナイフを突き刺しているところを。



彼は何事もなかったかのようにカッターをポケットにしまった。そんな彼の背後に近づき、肩をぽんっと叩いた。



彼は驚いた顔で振り向く。そりゃああんなことした直後だもんね。見られたと思ってびっくりするよね。



『それ、私の自転車』



にっこり笑って言うと鋭い目つきで見られた。睨まれた?



慎「…お前、徒歩だろ」
『あ、バレちゃった?』



慎一くんとは同じクラスだけどちゃんと話したことはない。彼女いるしね。でも実はそんな彼を好きだったりする。



『この自転車、隣のクラスの田中くんのだね。慎一くんがパンクさせたって知ったら怒るかな?』



すこーし首を傾げながら慎一くんを見上げると、後ろの壁にどんっと手をつかれた。



壁ドンだ、壁ドン!



慎「何、バラすの?」
『んーん?そんなことしないよ?でもひとつだけお願いきいてもらおうかな』



慎一くんは冷たい視線を私に下ろす。
その顔すごく好きかもしれない。



そうして私は今、慎一くんの家の、慎一くんの部屋に来ている。



私は彼に勉強を教えてほしい、と頼んだ。案外普通のお願いでしょ?



『じゃあよろしくね、先生?』
慎「それやめろ」
『え、だめ?じゃあ慎一くん、お願いします』












ふう。勉強飽きてきた。



慎「疲れた?終わる?」
『んー、休憩』



さっさと終わらせて早く帰ってほしいのかな?冷たいなあ。



慎一くんはベットに腰かける。私もその隣に座った。あ、ちょっとうざそうに見られた。



『慎一くんさ、彼女のこと好き?』
慎「…別に」
『じゃあなんで付き合ってるの?』
慎「なんとなく」
『ふーん。それなら私を彼女に選んでくれればよかったのに』



その言葉にこちらを向いた慎一くんをどさっとベットに押し倒す。



『ねえ、キス、していい?』



右手を彼の足に添えて聞く。



すると突然ぐるんと体制が逆になり、私の視界には慎一くんと天井が映った。



その状況を理解する間もなく、彼が私の唇を塞ぐ。



『んっ…ふ、』



角度をかえて何度も何度も。彼女ともこういうことするのかな?って思ったら少し胸が苦しくなった。



慎一くんは私の制服のシャツのボタンをひとつひとつはずしていく。今日かわいい下着つけててよかった。



私も慎一くんのシャツのボタンをはずす。でもうまくできない。そんな私を見て彼はすこし笑った。



『あっ!』
慎「何?」



私がいきなり大きな声を出したから、慎一くんの手が止まる。



『やっぱり笑うとかっこいいね。笑ってなくてもかっこいいけど』



そう言うと、何を考えているのかわからないような瞳で見つめられる。



『?どうしたの?』
慎「いや、変な奴」
『その変な奴と今からえっちしようとしてるのが慎一くんだよ?』
慎「もういい、黙って」



慎一くんは私を黙らせるように唇を塞ぐ。あ、今のすごく好き。



キスをしながらブラのホックを外され、ゆっくりと触れる彼のあたたかい手。



『は、っ…』



今すぐにでも彼がほしい。



彼女がいてもいい。



今だけは私だけの彼にしたい。



『慎一く、ん』
慎「何?」
『名前、呼んで?』



そう言うと、耳にちゅっとキスをされ、そのまま耳元で「里奈」と呼ばれた。



彼の指が下の部分を刺激する。もう頭は何も考えられなくなってきた。



『んっ、はぁ…ね、もう慎一くんのいれて?』
慎「そういう顔、するんだ?」



私の中に彼のものが入ってくる。好きなひととこういうことができるってなんて幸せなんだろう。



夢心地のまま、私たちは絶頂を迎えた。



情事後、制服の乱れを直しながら彼に聞く。



『彼女とえっちするの?』
慎「しない」
『じゃあ、また私とえっちしよ?だめ?』
慎「…いいけど」
『ほんと?よかったー』



慎一くんにぎゅっと抱きついた。



あの彼女では慎一くんの心を満たしてあげることはできない。肩書きだけの彼女。それに気付いたから、こういう関係を作り上げたわたし。彼の傍にいれるならこんな関係さえ喜んで受け入れる。



彼がわたしを欲しがるまでは。




end.
 

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