story

□キッドじゃなくて(黒羽快斗)
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教室でスマホの画面をじっと見つめるリナ。そこに隣の席の快斗が登校してきた。



「ようリナ、何見てんだ?」
『快斗、おはよ』



快斗はリナの後ろからスマホの画面を覗き込む。そこに映っていたのは昨日の怪盗キッドの映像だった。



「まーた怪盗キッドか」
『昨日のキッド様もかっこよかったよねえ…遠くからしか見れなかったけど』
「おま…見に行ったのかよ」



快斗が少し呆れたように笑った。



『はぁ…好き……抱かれたい』



リナがぼそりと呟く。



「だっ…抱かれ…!?」



その呟きは快斗の耳にも届いた。頬を赤く染めて狼狽える快斗。



『はぁ…ほんとかっこい、むぐ』



快斗は思わずリナの口元を手で塞いだ。リナの視線の先にはむっとした顔の快斗。



リナが首を傾げると快斗はその手を離し、教室を出て行ってしまう。



『えっ、ちょっと快斗?』



リナは慌ててそのあとを追う。快斗は人気のない屋上への階段にどかっと腰を下ろした。



『快斗、どしたの?』



追ってきたリナがその隣に座る。



『快斗もキッド様好きでしょ?』
「俺は……」



快斗は一度リナを見るが、すぐに顔を背けてしまう。



『……俺は、何?』
「俺は……お前が好きだ」
『………』
「だから、他の男に抱かれたいとか言ってんじゃねーよ」
『っ、あれは……』



リナは頬を赤く染め、しどろもどろになっている。



「…顔、赤いけど」
『っ……だって快斗が…』



先程までとは違って快斗は余裕の笑みを浮かべてリナを見ている。



「怪盗キッドじゃなくて、俺に抱かれたいって言えよ」
『っ……』



まっすぐ目を見つめてくる快斗とは反対に、リナの瞳は揺れる。快斗はそんなリナの腕をそっと引き寄せ、触れるだけのキスをした。



『っ……』



すぐにリナは俯き、赤くなった顔を隠そうとする。そんなリナを見て、快斗は口角を上げて微笑むのだった。



end.

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