Alice

□02
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次の満月まで、あと30日…。



黒の軍に守られることになったリナは、レイと共に馬の背に揺られている。レイの温もりを背中に感じ、リナは相変わらずドキドキしていた。



そうして街を出ると見慣れない景色が目に飛び込んでくる。



『わぁ…!』
「おい、景色に見とれんのはいいけど落ちんなよ」



きょろきょろしているリナの体が落ちないように、後ろから手綱を握るレイ。



『あっ、うん!』



レイの隣で馬を並走させていたシリウスがそんなリナを見て穏やかに笑った。



「リナ、前を見てみろ。もう少しで黒の兵舎が見えてくるはずだ」



シリウスの言葉に、リナは視線を前に向ける。目の前には長く長く続く石畳の向こうに黒で染まった大きな建物が見えた。それは赤の兵舎とはまったく雰囲気が違う物だった。黒い旗が揺れるその兵舎はどこか開放的に見える。



リナが目の前の建物に目を奪われていると、向こうから賑やかな声が響いてきた。



「キングのお戻りだ!」
「シリウス様、ルカ様とセス様、フェンリル様もいるぞ!」
「おかえりなさーい!」



黒の兵達は嬉しそうにレイ達を出迎える。



「今日も盛大なお迎えだなー」
「ったく、わざわざ出迎えなくてもいいって言ってんのに」



楽しそうなフェンリルとは反対に、レイはどこか呆れた様子だった。そんなレイを宥めて、フェンリルはリナの方を見た。



「リナ、あいつらは俺らの仲間だ」
『すごい人数だね!』
「ま、ざっとこの兵舎には500人くらい住んでるからな。これでも赤の軍に比べたら少ない方なんだぜ。レイ、そろそろ馬止めるか」



フェンリルの言葉に馬の振動がゆっくりと止まり、レイが颯爽と馬をおりる。そしてリナに差し出されたレイの手。



「ん、どうせ1人じゃ下りられねーだろ」



意地悪くにやりと笑うレイの手をリナは素直に取った。だが馬を下りるときにバランスを崩してしまう。



『わっ…!』



そんなリナの体を、レイは昨日と同じようにしっかりと受け止めた。



「お前…よく落ちてくるな」
『っ、ありがとう』



ふっと笑みを見せたレイに、リナは顔を赤くしてお礼を言う。そんなリナに、レイはエメラルドグリーンの目を細めた。



「ようこそ、黒の兵舎へ」
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