Alice

□03
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『シリウスさん、私…レイとの壁を壊してみせる』
「ああ、その意気だ。まぁあいつも分かりにくい奴だからな」
『分かりにくいって?』
「言葉にするのが下手。口数はそんなに多くない。その上、愛想笑いのひとつもしないときたもんだ。もうちょっとにこにこしてりゃあいいのにな?」



わざとらしく肩を竦めて見せるシリウスに、リナも小さく笑った。



「にこにこ?」
『っ、レイ!』



すぐ近くで聞こえた声に振り返ると、そこには腕を組んでむっとするレイが立っていた。



「おっと、聞かれてたか」
「白々しいな、おっさん」
「お、おっさん…?」
「リナ、お前このおっさんに何吹き込まれたわけ」
『レイは笑うとかわいい、って』
「は?かわいい?」



レイはあからさまに眉を寄せる。



「レイ、おにーさんはリナに頼み事をしてたんだ」



おっさんと呼ばれたことが悔しいのか、自分のことをおにーさんと呼ぶシリウス。



「頼み事?」



そんな話は聞いていないリナがシリウスを見ると、口裏を合わせろと言うように片目を細めた。



『(おお…ウィンク…)』



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



その翌日、リナとレイはセントラル地区までおつかいに来ていた。レイはシリウスの書いたメモを見て渋い顔をしている。



「羊皮紙、ペン、魔法石、バゲット…なんで食べ物まで入ってるわけ」
『ふふ、ほんとだ』



レイの持つメモを覗き込みながらリナはくすりと笑う。



「ま、行くしかねーか。ちゃんと俺のあと着いてこいよ、まだ知らない街で迷子になりたくねーだろ」



そう言ってすたすたと前を歩くレイ。そんなレイをリナは慌てて追いかけた。



『待って!迷子は困る!』
「待たない」
『なっ、いじわる…』



不貞腐れるリナを少し振り返り、レイはにやりと笑った。



そうして雑貨屋、市場、酒屋などいろいろな所に立ち寄って買い物をしているうちに、気づけば空は茜色に染まっていた。



『これで全部、かな』
「ああ。…ったく、あのおっさん人使い荒すぎ」



手の中の荷物を見てレイはため息を零す。



「それじゃ、行くか」
『え?買い忘れ?』
「そうじゃなくて」



リナは首を傾げる。



「お前にまだクレイドル案内してなかっただろ」



予想外の言葉にリナが何も言わずレイを見つめる。



「それとも、帰る?」
『帰らない!案内してほしい!』



リナは嬉しそうにとびきりの笑顔を見せるのだった。そんなリナを見て、レイは緩く口角を上げた。
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