Alice

□07
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そうして夜が開けた頃、リナはたくさんの洗濯物を抱えて外に出た。



『…ん?』



今は訓練の時間なのに、兵士達は輪になって何やら話をしている。



「結局、橋を爆破した犯人は誰だと思う?」
「潔白を誓ったらしいけど俺は赤の軍の仕業だと思うな」



橋を爆破した犯人は誰か、その話題で持ち切りだ。また同じことが起こるかもしれないと、リナが少し不安になったとき。



「おい、お前ら何してんだー」
「シリウスさん!」
「口動かしてる暇あるなら体動かせ。お前ら軍人だろうが」



シリウスの確かな重さがある言葉に、兵士達は一斉に背筋を伸ばし組手を始める。やがてそこにフェンリル、セス、ルカが混ざり指導を始めた。だけどレイの姿は見当たらない。



リナは花に水をやっているシリウスの元へ行く。



『シリウスさん』
「どうした?」
『あの…レイは?』



リナは少し遠慮がちに尋ねる。



「あー、レイなら今日は用事があるって出て行ったぞ」
『…そうなんだ』



レイが訓練に参加しないなんて珍しい、と思いつつ、どんな顔をして会えばいいのかと思っていたリナは少しほっとした。



「リナ、それどうしたんだ?」



ふいにシリウスがリナを見て尋ねる。



『えっ?』
「そこ、赤くなってるぞ」
『!!』



シリウスが首筋を指さした瞬間、リナは急いでそこを手で押さえた。まさかそんなところにも跡があるなんて、知らなかった。



『あっ…えと…』
「…あぁ」



シリウスはリナの赤くなった顔を見て、気づく。そして少し苦笑して頭をかいた。



「悪い、配慮が足りなかったな」
『いえ…すみません』



顔を赤くしたまま髪でそこを隠すリナを見て、シリウスは小さく笑った。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



その夜、リナはレイの飼い猫、ベルをお風呂に入れていた。タオルでベルを拭いていると、その手をすり抜け廊下へと逃げ出してしまう。



『あっ、ベル待って!』



リナが慌てて追いかけると、思わぬ人物の姿に驚く。そこには逃げ出したベルを抱きかかえたレイがいた。



『レイ、おかえり!』



リナは嬉しそうに駆け寄る。その姿を見てレイも柔らかく目を細めた。



「なんでこいつ濡れ猫なわけ?」
『外で遊んでたら水たまりに落ちちゃったみたいで、お風呂に入れてたの』
「で、逃げられたと?」
『う…ごめんなさい…』



リナはしゅんと肩を落とす。



「なんでお前が謝んの。こいつ、風呂大嫌いなんだよ」



レイはベルの濡れた頭を指でつつく。リナはそのレイの表情に違和感を覚えた。
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