Alice
□08
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『さっきのレイの声…嘘ついてるみたいだった。それに、どうしてフェンリルに最初で最後の頼みだなんて言ったの?』
ひとつの違和感をきっかけに、まるで波紋のように不安が広がっていく。リナの胸が不安に飲み込まれそうになる。
「リナ」
フェンリルが力強くリナの肩を掴み、リナはハッと顔を上げる。
「リナ、お前はどうしたい?」
『私、は…』
空を見上げると、空には月が昇り始めていた。
「リナの気持ちを聞かせろ」
その言葉に、リナはフェンリルをまっすぐに見つめる。
『私、レイのこと追いかけたい』
「……」
『レイの傍にいたい』
フェンリルは一度ゆっくりと瞬きをする。
「今日を逃せば、お前が次に帰れるのはまた30日後だ。それに…」
肩を掴む力が少しだけ強くなる。
「今日を境に赤の軍との戦いが加速していったら、いくらお前が魔法を弾き返せても…命を落とすかもしれねーんだぞ」
『…わかってる』
ここは決して平和な世界ではない。
『でもそれはフェンリルもレイも、みんな同じだよ。月の向こう側に行けば、ここにいるみんなの無事すらわからなくなる…』
リナはフェンリルに頭を下げた。
『お願いフェンリル、無理なこと言ってるってわかってる。レイが1人で戦おうとしてることだって、何の確証もない』
「……」
『でも、今行かないと……今レイの傍にいないと、私はずっとずっと後悔する』
少しの沈黙が辺りを包んだ。
「…できるわけ、ねーだろ」
フェンリルの冷たい声にリナが顔を上げた瞬間。
「なーんて言うと思ったか?」
フェンリルがにやりと笑う。
「俺は、お前の意思に従うぜ」
『フェンリル…』
リナの顔がほっとしたように和らぐ。
「それと、リナの言葉信じてやる。全部、全部信じてやる。女の勘は当たるって言うしな?」
『ん…ありがとう』
「それに…俺もあいつの傍に行かなきゃいけねえ気がすんだよ」
フェンリルの表情が一瞬だけ険しくなる。
「よし、とりあえずここを出るか」