事件帳

□夜の音
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綾「はぁ…」




私は小さくため息をつくと、時刻を確認する。自分でも呆れるほど、今日何度目か分からない。




綾「今日は無理かもしれないわね…。」




12月24日、今日はクリスマスイブだ。恋人の部屋に居る。一人で特番を観ながら。




綾「とりあえず、部屋をあたためておくか…。」




そんな独り言をつぶやき、こみ上げて来た怒りをここに居もしない上司にぶつけたくなる。今日の出来事を思い出すと尚更だ。







小野瀬「おはよう、九条さん。今時間ある?」


綾「おはようございます。ありますけど…?」




と、返事をすると同時にラボへ連れていかれる。まだ朝早いため、誰も居ない。





小野瀬「…綾。今日は早めに帰れるよ。太田たちが気を利かせてくれたから。」


綾「えっ!そう、じゃあ今日は二人で過ごせるの…?」




捜査室のメンバーには知られているけど、一応他の部署の人たちは私たちが恋人同士なのは知らない。




小野瀬「帰る時、連絡入れるから待っててくれる?」


綾「分かった。でも今年はクリスマスパーティー、誘われなかったの?」


小野瀬「逃げ切ったよ、当然。誰かに邪魔されてたまるか。」




去年を思い出す。付き合いたての頃、クリスマスを邪魔されたことを思い出した。
そう、捜査室メンバーに。無理やり飲み会を開いて。
それが終わったと思ったら今度はお偉いさんたち飲み会に攫われる葵。




小野瀬「大丈夫。ちゃんと逃げ切るよ。去年みたいにはならない。」


綾「うん。私も気合入れて終わらせるから。」


小野瀬「そうだね。でも俺の電池が足りないから充電して。」




そう言って葵がソファーに座る。瞬間、腕を強く引かれる。そのせいで油断していた私は葵の上に乗るような形になってしまう。




綾「葵!?何するの!」




驚いた私は逃げようとする。しかし、腰をしっかり抱かれているためそれが出来ない。




小野瀬「イブだから特別に綾からキスして。今日はいつも邪魔してくる穂積はまだいないし。」


綾「え!!あの…?」


小野瀬「ん…?なあに?」




出た。その声でその発言はずるい。




綾「少しだけ!一瞬だけよ!一応ここ職場なのに…。」


小野瀬「うん。そんなに赤くなってるとリンゴと勘違いして食べちゃうかもよ。」




そんなことをいうものだから焦ってしまう。軽く口づけると満足そうに微笑む。心臓に良くない。




小野瀬「今日はラッキーだね。穂積のヤツ、イチャついてる所を邪魔しに来るからうざい。」


綾「うざいって…。葵、私そろそろ時間…」


穂積「はい小野瀬くんおはよう!ところでウチの長女、居るかしら?」


二人「!?」



…タイミングが良すぎる。たまたまなのか図ったのか、どちらにしても今は気まずい。ものすごく。




小野瀬「帰れ!」


穂積「はぁー?どこかの元ヤンがウチの大事な娘を拉致してるから来たんですけどー!!」


小野瀬「あのさぁ、うるさいからとりあえずここで無駄に騒ぐのやめろ。それから綾が悪魔の娘な訳がないだろ!」


穂積「お前が俺をうるさくさせてんだよ!湘南に帰れ、この女の敵めえぇ!」




あぁ、また始まった。
葵と私が付き合い始めてからは特に騒がしい。
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