別館

□どうか許して
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綾「おはようございます。昨日の件、発展ありましたか?」


穂積「九条…?何よ、あんた随分早いわね。」


綾「早くしないと、被害が増す一方です。…被害というべきかは分かりませんが。」




そう昨日の件とは、一般道に飴やらチョコやらお菓子が、ばら撒かれていると言ういたずらの事。被害はそれだけなのだが、いかんせん幅が広く、住民も呆れかえっている。




穂積「ああ…その件ね。解決したわよ。」


綾「は…?ただのいたずらにして大規模でしたけど、犯人見つかったんですか?」


穂積「あの辺り、お菓子工場あるでしょう?大きいやつ。そのせいで近くの小さい工場が悲鳴を上げてて、それの腹いせらしいわ。ただ、ばら撒いただけ。」


綾「よく、犯人分かりましたね!」


穂積「防犯カメラを、つい最近設置したらしいのよ!自治会長がそれを今朝!早朝5時に!思い出して!わざわざここに電話して来たの!!で映ってた!」


綾「…あー。上に呼び出された、ということですか。お疲れ様です。」


穂積「全くだ!…というか、あんた少し慌てすぎじゃないかしら。それ、スーツのボタンズレてる。」


綾「あ。」




ふと、自分の胸元を見るとボタンが段違いで止まっている。小学生じゃないんだからと、ため息をつき、直す。
上司に背を向けるのは失礼だが、男性だ。後ろを向き持っていた鏡で確認する。




穂積「それから、それは寝癖?」


綾「え!?あ、もう本当に。学生振りですよ…。これでも一応身だしなみ気をつけてるつもりだったんですが。」


穂積「普段はきちんとしてるのに、今日だけ慌てて…。小野瀬の野郎とデートか。早く終わらせたかった、ってところか?」


綾「はい…その通りです。」




鼻で笑い、室長は私の頭を撫でる。




穂積「髪は頑固じゃないわねー、あんたと違って。」


綾「そ…」


小野瀬「おはよう。穂積その手を離せ。」


穂積「おー、小野瀬が怒ってやがる。」


小野瀬「…九条さん、ちょっと出てくれる?」

(まずい…)



そう思った。もしかして、室長と二人で話してたから怒った?しかし、仕事の話だし、と冷や汗をかく。




綾「分かりました…。」




私が出ると、中から言い合う様な声が聞こえる。それが終わったのは、皆が出勤してくる頃だった。








綾「終わったー!!よし、それではお先に失礼します。」


如月「あれ?今日は九条さん早いですね!!」


櫻井「あ、分かった!デートですね、小野瀬さんと。」




その声に返事をすると、ラボに向かう。ドキドキしながら。しかし…




小野瀬「ああ…もう終わるから。車で待ってて。」





少し冷たい声。それだけ言うと鍵を押し付け、半ば強制的に、ラボの外に出される。

(まだ怒ってる…。)



駐車場に着くと、ひやひやしながら車の中で待つ。すると、窓を叩く音。




綾「葵…。」


小野瀬「終わったよ。それから、今日は予定変更。俺の家に行こう。」




と、だけ言ってそれきり黙ってしまう。いつもなら何かしらちょっかいを出してきたり、話をするのに。









小野瀬「ただいま。…綾、そこに座って。」


綾「…うん。ソファで良いの?」


小野瀬「出来れば、俺の膝の上。」


綾「ねぇ…?怒ってるのはもしかして、朝室長と二人で話してたから?」


小野瀬「そうだけど、そうじゃない。もっと他にある。」




そう言うと、葵は私を膝から降ろし、腰を撫でる。




綾「っ…寝癖の方…?室長が触れたから?」


小野瀬「…そうだね。器が小さいって思う?けど、そんな油断してる君も、君の髪に触れる事が出来るのも俺だけ。そうじゃないと、俺は嫉妬で君を見てるのが辛くなる。」


綾「私が好きなのは葵なのに…私は室長を上司としてしか、見てないわ。それでも?」


小野瀬「それでも。嫌なんだよ、そんなことで妬く自分も、それで君を困らせる自分も。だから、今日は余裕が無いんだ。」


綾「今朝のは…っ!」


小野瀬「あれは確かに穂積が勝手に触るから、穂積が悪い。…こんな俺は嫌い?」




私は首を横に振る。彼を見つめ、そっと胸に寄りかかる。




小野瀬「綾が穂積や他の男と二人で話してるのを見ただけでこんなにモヤモヤした気持ちになる…。」


綾「葵…?あ…っ」




彼の顔が迫りソファに押し倒される。まるで、切ないと言いたいばかりの顔で。




小野瀬「ごめん、今日は優しく出来ない。君に触りたくて仕方がないんだよ。」


綾「だ、だから室長とは、ただ事件の話を、っ!?」


小野瀬「わかってるよ。でも我慢出来ない。スーツ、シワになっても怒らないでくれる?」




そう言うと、親指で唇をなぞる。キスをするようにゆっくり、何度も。そのまま葵の手が降りて行き、着ていたブラウスの胸元に侵入してくる。



綾「あ…っ…」


小野瀬「うん…可愛いよ。」




いつもの彼らしくなく、少し雑にボタンを外して行く。下着が覗き、葵がそれに触れる。
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