書物

□サタンのお仕事
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春もそろそろ終わる頃。
一年生のクラス内ではだんだんと新しい生活に慣れ始めていた。

「新勧の季節だねぇ」

生徒会で一番陽の当たるのがトラの席。そしてトラも子供体温なのかポカポカと暖かいので、トラを椅子に暖かいココアを啜る俺。

「なんか…お前らの姿見てると微笑ましくなってくるな…」

「生徒会の癒し、ですね…」

シロちゃんとかぐやの間ではそんな会話がなされていた

「そっか、もうすぐ新勧かぁ…」

「去年はお茶会だったっけぇ」

そう、去年はお茶会だった。
あの某お見合い番組の様に、各テーブルをぐるぐる周り、親睦を深める、というやつ。

下級生には憧れの先輩と話せると割と好評だった。

「シロちゃん、今回は何にしよっかぁ?」

今回は何か、と腐男子的にはワクワクです。
生徒会役員的にはめんどくさいのが来ないかドキドキです。

「そうだなぁ…去年はあんま動かなかったし、今回はスポーツ系にするか」

「スポーツって言うと、サッカーとかバスケとかな?」

「ダメダメ、アメダスそんなの逆に喧嘩とか起きちゃうでしょぉ」

「アメダスって呼ばないで!」

「では………ドロケイ、とか如何ですか…?」


そうかぐやが言ったあとに生徒会室は静寂に包まれた。

というか、みんな固まっている。
きっとみんな『輝夜ドロケイ知ってたの!?』っていうのと、『ドロケイってなんだ…?』っていう沈黙なんだろうなぁと思う。


そんな沈黙を破ったのは耐えられなくなった俺だった

「ぶふっ…、かぐやちゃ…ドロケイ知ってんだ…」

笑いを耐えようとしてぷるぷる震える体をトラがぽんぽんと撫でる

「今調べたんです!それに、なんで私が知ってたら笑うんですか!」

顔を真っ赤にして怒りだすかぐや。それを見て耐えかねたのか魅守兄弟も吹き出した

「ま、まぁ…ドロケイならルールも簡単だし…こっちでルール増やせば出来るでしょ」

今だぷるぷる震え、笑いながらそう言うアメダスにかぐやは少々不機嫌になりながらそうですね、とだけ答えたのだった。

そしてルールを決めよう、と言う話になった時、トラにぽんぽんと叩かれた。

「ん?トラどーした?」

俺の目をじっと見つめてから、眉を少ししかめる

「ぁ、ドロケイ知らなかった?」

するとこくこくと頷く。あ、可愛い

「ドロケイって言うのはねぇ、泥棒と警察の略なんだぁ。でね泥棒側と警察側に分かれてぇ泥棒を捕まえるのぉ。で、泥棒を牢屋って枠の中に入れるんだけどぉ捕まってない泥棒が捕まった泥棒にタッチすると脱獄されちゃうんだぁ。終わり方は色々あるんだけどさ ぁ。」

トラは俺の説明を聞き終わってむ、とだけ言って何かを考えるように顎に手を当てて固まった。

「じゃあ終わり方どーしよっか?制限時間内に全員捕まえられれば警察の勝ち一人でも逃げ切れば泥棒の勝ち、でいい?」

「んー、アメダスの意見にさんせぇ」

「はいはい!雪もさんせー!」

雪の声に、トラもこくこくと頷いた。

「私も問題ありません。会長は?」

と今日の仕事は終わった様で資料をとんとん、と整え出すかぐや

「俺もそれでいい。今日はもう帰って良いぞ、お疲れ」

「わーい!お疲れ様ー!」

「お疲れ様でした。」

それぞれ帰ろうと扉をあけた時


「ぉ、やっと終わったのか!!遊ぼうぜ!」

突然現れたのは王道君こと緑川だった

「ん、春遊ぼー!」

「春、今日は何して遊びますか…?」

「春………」

ゆっきーは右側、かぐやは左側、トラは後ろから抱き着く。

そんな生徒会ファンからは呪い殺されそうなハーレムが完成した。

俺的には大好物なんですけど、総受け。

そう言えば、緑川はいつの間にか変装を解除していたようだった。
うん。これは可愛い。

「今日はなー、茉緒と遊びたいんだよ!だから皆、ごめんな?」

その言葉にその場にいた全員がぴしり、という音を立てて固まったのだった。
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