DRRR!!

□天真爛漫
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「...ん、ね...、竜ヶ峰君!!」


誰かの怒鳴るような声に慌てて閉じていた目を見開く。
暫くはぼうっとしていた脳内も数秒の時間を経てすっかり整理され、今が数学の授業中であるという事実を僕に突き付けた。

そして今、僕の目の前に立つ人物は数学専門の教師であり、性格やルックスの良さから女子からの信頼度、人気度が共に
校内で一番高いとされるまさに完璧な先生____名前は確か、オリハライザヤ。

漢字はどう書くんだろう、とオリハラ先生が首から下げているネームホルダーを確認したところで、突如頭をグーで殴られた。

手加減無しで放ったとされる一発を喰らい完全に目が覚め、自分が今居眠りで注意されていることを察知する。


「わ、わ...す、すみません!」


慌てて座ったまま折原先生へと頭を下げると、机の角が自分のおでこへ直撃する。
ゴツン、と鈍い音がした。
これで先程までの眠気はきっと、天高く旅立って行ったであろう。
周りから聞こえる大きな笑い声もこの際、気にしないでおこう。
あまりの痛みにおでこを左手で抑え込むと、次に聞こえたのは折原先生の笑い声。


「...っぷ、あははははははは!」


折原先生は機械のように、同じ調子の笑い声を発している。
居眠りに関してはもう怒っていない様子で、思わずホッと安堵の表情を浮かべる。


「竜ヶ峰君って面白いね、世紀のドジっ子って感じ」


全然嬉しくない褒め言葉を貰い、反応に困る僕を尻目に先生は何かを考えるようにして両腕を組んだ。
暫しの沈黙の後、先生の口がようやく開き始める。


「よし、面白い君の為に今日は先生の特別レッスンを設けてやろう。
君が居眠りしていた間に皆が学習した内容の問題を50問。じっくり放課後に教え込んであげるよ」


そう言ってニヤリと不敵な笑みを浮かべると、僕の頭の上にポンと右手を置いてワシャワシャと撫で回した。

急な放課後の補習が確定して、正臣や園原さんと帰ることが出来なくなった僕は幽かに折原先生へと「嫌な先生だなあ」という印象を抱いてしまった。
勿論、授業中に居眠りをした僕が悪いのは十分分かっていたが、それでも笑いながら僕に死刑宣告をするような先生は好きになれない。


結局その後の授業でも補習の件が頭から離れず、国語の教師からこっ酷く叱られる始末となった。

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