Moonglow 〜螺旋状のサヨナラ〜(from マジすか学園)

□『新たな風』
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士side




「…はぁぁ!? 意味わかんねぇよ、あんた…」




?「まぁ、まぁ…ここは一つ私の顔に免じて、聞いてくれないかな?」



平日の午前中に響き渡る叫び声が、周囲に居る人達の視線を集める。



いつもなら、今頃は学校に居るはずの時間だが今日は祝日。しかも月曜日。



三連休の最終日ぐらい、思う存分のんびりと過ごす……はずだった。



そう、今目の前に居る中年の男性によって士の思惑は消えてしまった。




「…てか、第一に男である俺が…女子校なんかに転入出来る訳ねぇだろ、普通?」




?「それはな士…向こうの校長から頼まれたんだ。

…その人は、私の昔からの知り合いでね」




「……叔父さんの知り合いとはいえ、俺にだって考える権利ぐらいはあるでしょ?」




何とかこの状況を回避しようと、士は色々と論弁を試みたが、目の前に居る人物には全く効果は無かった…




?「……あぁ、考えるのは君の自由だ。

だが士…今の向こうにとっては、君が非常に必要な存在だそうだ」




「…それ、どういう意味?」




?「……君に転入してもらいたいのは、馬路須加女学園だ」




士は少しの間、その場で身体・思考共に硬直してしまった…




「……馬路須加女学園?」









───その一週間後。



2011年10月17日 午前11時。





あと一時間も経てば、世間では昼と呼ばれる時間帯。



普段なら遅刻どころのレベルでは済まされないが、今日は全然気にしなくても大丈夫だ。



いや、今日 "から" の方が正しいだろう…



何故なら今、士が立っているのはいつもの見慣れた校門では無く、全く初めて見る校門の前なのだから……






「うわぁ…さすが関東一と呼ばれるヤンキー校。

……窓ガラスと言い、壁の落書き具合と言い…てか全てがブッ飛んでるな。笑」




目の前で広がっている光景を目にし、士は笑う事しか出来なかった。



「…ハ…ハハッ……

まさか俺が、女子校なんかに転入するなんて…あの時の俺じゃ思ってもみないだろうな…」




校門に設置されている看板は、落書き等で非常に読みづらい程の酷さだったが、士は看板に看板に書かれている文字を一字一句見つめた…




"馬路須加女学園"




「……居るかな、あの子?」




士はあの日、家の前で偶然出会った子の事を思い返していた。



あの "左瞼に付いた傷" の子の事が、あの日以来から何故かずっと、士の頭から離れなかったのだ…




「じゃ、ちょっくら新人らしく挨拶回りにでもしますかね……って、俺は別にヤンキーじゃねぇけど…」




ボソッと独り言を呟きながらも、士は "マジ女の生徒" としての一歩目を踏み出し、そのまま学校の敷地内へと入っていった……
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