Moonglow 〜螺旋状のサヨナラ〜(from マジすか学園)
□『復讐』
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─── 翌日。
「…うぁぁ…ぁ。……眠っ」
士は瞑りかけている目を奮闘させながら、頭をポリポリと掻いた。
昨日はあれからというもの、秋山から事の状況を簡単に説明された。
昨日の男が関西最大の極道組織「近江連合」の直参である郷龍会の会長、二階堂哲雄という男だという事…
その二階堂が、遥という女の子を誘拐したという事…
その一件を知り合いと共に秋山が解決しようと動いている事…
そして、誘拐された遥の親代わりである人物の事…
説明を受け終えた直後、士は状況の整理が追いつかず、少しだけ頭が混乱した。
それでも無理やりではあるが、なんとか理解する事にこじ付けたが…
士はもちろん、乗りかかった船から降りるつもりは無く、秋山に頼み込んだ。
自分もこの一件に協力させて欲しいと…
しかし、秋山の出した答えに士は未だに納得はしていなかった。
何故なら、秋山は士を巻き込みたくは無いという一点張りで、協力を断ったからである。
そして結局、メシにもありつけなかったまま夜を過ごし、今の状況があった…
「…でも…俺の性格、よく知ってるけど思ってたけどな、秋山さんは…」
士は歩いている途中、道のど真ん中で立ち止まり、考えた。
「………」
難しい表情を浮かばせながら、士は目を閉じたまま俯き、腕を組む。
普通なら秋山の問題なのだから、自ら首を突っ込む事はしない。
だが、今回は少しだけ状況が違う為に士は悩んでいた。
それは、学ランの存在が関係していた。
というよりも、学ランの妹と言った方が正しいのかもしれない…
その遥という女の子を誘拐した奴らは、同時に学ランの妹を誘拐していた。
そして、それを餌にして学ランに何かをやらせようとしていた。
だが士は、学ランが何を指示されていたのかは聞いておらず、不明確なままであった。
昨日、家に戻ってから士は、一晩中その事について考えていた。
まぁそれが今、寝不足気味である原因ではあるのだが…
何故、奴らは学ランの妹を誘拐したのか?
そして、学ランに何をやらせようとしていたのか?
士は考えに考えて、そして夜も明け始める二時間前ほどに、その疑問に対する一つの結論を出した…
「やっぱ、本人に聞くのが一番か。…丁度、迎えにも行かねぇといけねぇし…どうするかは、それからだな…」
何故か士は、何かを納得させた様な態度を取る。
そして、進む方向を切り替えると再び歩き出した。
その歩き出した脚は、神室町へと向かっていた…
「…おっ」
学ラン「……よっ」
早速士は、昨日学ランを運び込んだ「柄本医院」まで向かった。
すると、到着したのと同じタイミングで、ビルから出てくる学ランと対面した。
頭にはしっかりと包帯が巻かれ、顔面にも傷跡がまだ残っているが、本人の様子を見れば大丈夫である事ははっきりとしていた。
士は舐め回すようにじっくりと学ランを眺めた。
学ラン「…なんだよ…気持ちわりぃな」
「…意外とピンピンしてんだな?」
学ラン「まぁ…体は丈夫な方だからな。
それに、ここの医者がすっげぇ腕しててよ、何か俺も思ったより早く復活したわ」
「…へぇ。さすが、秋山さんって感じかな…」
学ラン「…秋…何だって?」
「…あ、いや、何でもねぇ。それよりもう行けるのか?」
学ラン「あぁ…何とかな」
学ランはそう言うと、体をピンピンと跳ねて体の回復度を士に示す。
頭に包帯を巻き、体を跳ねさせている学ランの姿に士は、何故かそれが可笑しく感じ、思わず笑い声を出してまった。
まぁ、見事に学ランから睨まれる結果になったが、士はあえて気にせず、学校に向けて歩き出した。
学ラン「…って、おい…置いてくなよ!」
学ランもまだ若干の痛みが残っている足にハッパをかけ、士の後を追った…
ゲキカラside
自分、最近なんか…変なのかな…
そんな事を思いながら、ゲキカラはいつもの道を歩いていた。
ここ最近、心の中で感じていた違和感。
それを抱いたのはいつからか?
その事については、ゲキカラの中ではっきりと解っていた。
それは…士と偶然出逢った、あの日から…
そしてあの日から何故か、士の姿を見る度に感じる心の違和感。
この違和感の正体が一向に解らず、おたべや学ラン達には黙ってるが、ここ数日程は正直に言えば悩み苦しんでいた。
昨日、ゲキカラはこの事を相談しようとブラックの元を訪ねた。
仲間であり、親友であるブラックに久々に再会した時間は本当に楽しく、時の進み具合が速く感じた。
そして、その再会の時間の最後…
ゲキカラはブラックに、自分が今抱いている疑問を問い掛けてみた。
ブラックは少し考え、恐らく十分ほど無の時間を過ごしていただろうか。
だがゲキカラはその間、ただじっとブラックからの答えを待ち続けた。
そして、ブラックが導いた結論を聞いた瞬間、ゲキカラは一瞬だけ頭の中がフリーズするような感じに襲われた。
何故ならそれは、生きてきた今までで、一度も感じた事もなければ、理解しようとした事も無かったからだった。
ゲキカラ「…そんな事…無いよ、絶対」
一人小さく言葉を呟くゲキカラ。
その表情からは、今までで感じた事の無い感覚に不安に包まれている様にも見えた。
そして、いつの間にかマジ女の近くまで歩いていた事に気が付いたゲキカラは、
目の前に見えるボロボロの校門を通っていく二つの人影を見つけ、その名を小さく呟いた。
ゲキカラ「……士?」
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