Moonglow 〜螺旋状のサヨナラ〜(from マジすか学園)
□『共闘』
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電話越しで聞こえて来る声。
その声の主はかなり焦っている事が伝わってきている。
まぁ、無理もないだろう。
なんせ絶対に巻き込ませないと考えていた人物が今、まさにその中心に居たのだから……
秋山「……士、悪い事は言わない。
今すぐ、そこを離れろ」
秋山さんの事だから、大体言葉のチョイスとかは俺には分かる。
もちろん俺は、秋山さんも絶対に思っているだろう言葉を返した。
「嫌ですよ。だって……秋山さん、俺の性格知ってるじゃないっすか」
秋山「うっ……だけど相手は近江連合…しかも幹部の一人だ。士が考える程、奴らの強さはそんな甘いもんじゃない!」
でも俺はちゃんと分かっている。
秋山さんは本当に俺の事が心配で言っている。
なんせもう、何年もの付き合いになる。
それぐらいの事は言わなくても分かる。
しかし今回は、状況が少しばかり違ってるんだ。
「……はい、分かってますよ。それぐらいは」
秋山「じゃあ…」
「でも秋山さん。今回は引くに引けないんです俺にも……」
秋山「士!」
「……俺のダチが、もう少しで犯罪に手、染めさせられそうになったんです。
だからこの喧嘩……無理やりっすけど、俺にも参加する理由はあるんすよ。あの二階堂をぶっ飛ばすぐらいしねぇと、学ランと妹の奈子ちゃんの為にならない……」
秋山「でもな士。だからと言ってこれはそんな簡単に……」
「大丈夫ですよ、俺は…」
秋山「おい!」
「……まぁ一応、学ランの借りを代わりに返す事と、後は遥ちゃん…でしたっけ?
桐生一馬という伝説の人、その人にとっての大事な人を取り戻す事……ちゃんとやって帰って来ますんで…それじゃ」
まだ秋山さんの声が受話口から聞こえていたが、俺はそれを無視して通話を切った。
「すいません。秋山さん……」
別に怖くはない。
なんてのは嘘になる。
いくらなんだって、相手が近江連合という事は十分に承知している。
それでもこの喧嘩は俺にとって、絶対に落とし前を付けにいかなきゃいけねぇ。
犯罪の片棒を担ぐ寸前だった学ランと、その為の餌とされた妹の奈子ちゃん。
その二人の為にも。
例え相手が、どんな奴だったとしてもだ……
「……えぇっと……どこ行けば良いんだっけ?」
完全に桐生一馬を見失った俺。
俺はすかさず先程のエレベーターがどこに止まったのかを確認した。
「……57階」
俺は隣のエレベーターを起動させ57階のボタンを押し、上へと向かった。
秋山side
通話が切られ、秋山は携帯を手にしている右腕を下へと下ろす。
伊達「どうした、秋山?」
谷村「……秋山さん」
様子がおかしいその姿に、伊達と谷村が声をかけるが秋山は反応しない。
しかし秋山の口が開くまで、そんなに時間がかかる事は無かった。
それどころか、心なしか秋山の表情に俄然としてやる気が満ち溢れていく様な……
秋山「……谷村、伊達さん。
すいません。俺、ちょっと……行ってきます」
伊達「はぁ?」
秋山「…すんません」
カラン、コロンとドアの鈴を鳴らしながら、秋山は扉を開けてセレナの外へと出て行った。
秋山の後ろ姿を見つめていた二人はその勢いに飲まれたままであったが、少し経ってからハッと我に帰り、特に谷村は慌てふためいた。
谷村「もしかして秋山さん……自分もミレニアムタワーに向かったんじゃ!?」
伊達「…間違いないな」
谷村「ど、どうするんですか!」
伊達「しょうがねぇ……とにかく、俺達は俺達で動くぞ!」
伊達はそう言って立ち上がり、セレナの店内を後にする。
谷村「…ちょ、待って下さいよ伊達さん!」
谷村も慌てながら伊達を追い、セレナを後にした……
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