short story


□悲しみの先にあるモノ
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時刻が夜の12時を過ぎ、気が付けば日付が変わっていた。





街を見渡せば、明るいネオンの光で照らされている。





今、ここにいる自分は本当に自分自身なんだろうか…






あっさんや優子ちゃん、麻里子さまなどの先輩が居たときは、まだ気楽に出来る所はあった。








でも、今の自分は無理をしている気がする。










「はぁ……疲れたなぁ」







私は、橋の上から見える景色を見渡しながら何も考えず、ただ佇んでいた。







明日はHKTの明治座公演の千秋楽があり、早く帰らなければいけないんだけど…








「……苦しい」








今まで支えていたメンバーが卒業していき、いつの間にか自分は先頭の中に入って走っている。







正直、今まで支えていた大きな二つの柱が無い中でAKBグループを支えていかなければならない。








HKTでも後輩に色々アドバイスをしてあげないといけないし、周りからは信頼されてるけど……本当はそんなに強くない。








私はヘタレなんだよね。






皆は知ってると思うけど、何年か前まではヘタレ呼ばわりされていた。






まぁ…実際にヘタレだし、今でもそうだ。







逃げたい時もある。




明日で千秋楽を迎える明治座公演も決定した当初は乗り気じゃなく、むしろやりたくなかった…






秋元先生から説得されて仕方なく受け入れたけど、正直ここまでよくやってきたものだと思う。






4年前だったらこんなに苦しくならなかっただろうに…








「……はぁ」









………ブゥ…ブゥ…







(あれ、優子ちゃん…?)






「…もしもし、優子ちゃん?」




優「おっ…元気か、さっしー?笑」




「何すか、いきなり?笑」






私は久しぶりに聞く声に笑みが溢れる。






優子ちゃんの声を聞くのは、確か2ヶ月半ぶりぐらいだった。







優「だから、最近さっしーTVで見ないから死んだかと思ってさ?笑」




「うらめし…やぁ…」




優「…さっしー、面白くない」




「ちょっと優子ちゃん、振っといてそれは酷くない!?笑」




優「あははは…ごめん、ごめん笑」






しょーもなさ過ぎるやり取りをしてから、私は気になった事を聞く。







「どうしたの、優子ちゃん?」




優「ほら、明日HKTの明治座の千秋楽でしょ?

だから、その激励だよ♪」




「…ありがとう、優子ちゃん。優子ちゃんも今、貞子役で忙しいのに恐縮です笑」




優「誰が貞子だって? さしは〜ら〜?笑」




「あっ……ごめんなさい」








もう少しで死亡確定だった所を何とか回避した私は、もう一度優子ちゃんにお礼を言い、電話を切った。





「さてと、そろそろ帰ろうっかな」





私は小さい声でそう呟き、家の方向へと再び歩き出した。







…………ピロ〜ン♪





「…ん、誰だ?」







疑問を抱きながらスマホをカバンの中から取り出し、液晶の画面を見てみるとそこには、先ほどの優子ちゃんよりも遥か久しぶりに見る名前が表示されていた…








「……理紗?」
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