short story
□change my mind
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あの日、君は僕の前から姿を消した。
ひどく心に響く言葉を最後にして……
あれから数ヶ月が経ち、僕は今日も下らない欲望を求め、街を彷徨っていた。
男「何やってんだ、てめぇ!」
――ボコッッ!
女「ありがとう♪ こいつ、しつこかったのよ」
僅かな意識の中、男の「二度と手出すなよ」という声と共に、男と女は消えていった。
塵の山、野垂れ死んでいるかの様に俺は身を預けていた。
今日も意味もない欲望を求めていた結果、今の状況が起きている。
「……ふっ。様ぁねぇわ」
彼女が最後に吐き出した言葉が、フラッシュバックするかの様に頭を巡り、苦笑いをするしかなかった……
俺は次の夜も、相変わらず意味のない欲望を求め、街を彷徨っていた。
そして欲望を見つけては、君の姿を誰かに重ねて……
俺はとある寂れたバーに立ち寄った。
店内には、数多くのアルコールと煙の中で、レコードの音が鳴り続けていた。
マ「ご注文は?」
「…ギムレットを」
マ「ほぉ、お強いお酒を頼まれましたね?」
「…えっ」
マ「あ、いや…若いお客様なのに、渋いお酒を頼むんだなと思いましてね」
「けっこう親父くさいって言われますよ…笑」
そういえば、彼女にも同じ事を言われていたな……
少しして、俺の目の前にギムレットが置かれ、それを俺は一気に飲み干した。
「ギムレットはまだ早い…か」
俺は何度も、酒を口に運びながら、強気な言葉を自分に言い聞かせた。
"後悔はしないだろう"
そんな言葉を言い聞かせ、バーを後にし、俺は再び街へと繰り出した。
答えの見つからない答えを探し求めて…
特別な事はしない。
ただ、己の心にぽっかりと空いているこの空虚を埋めたいがため、紛らせたいだけのために……
そして俺は、再び幾度目かの朝を迎えた。