オリジナル

□青春@
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「おはよー」隣の席の女の子の挨拶を聞いて、そっちを振り向くと、その姿に思わず顔をしかめてしまった。

「ど、どうしたの?」おはようという挨拶を返す暇も無く口から言葉がもれる。

彼女は首に、どうしたのだろうか、大きな白い湿布を貼っている。

「あははー…今朝寝違えちゃってさ…」彼女は苦笑いをした。

彼女は席につくとおもむろにその湿布を剥がし始めた。
「痛っ…」という声が時々漏れてきて、どうも自習に集中出来ない。
気になって視線を送ってみると、目あてられないほど曲がった湿布の首に貼られていた。

僕の視線に気付いたのだろうか、彼女はこちらに視線を向けた。

「あっ」彼女はそう言うと嬉しそうに笑った。
「そう言えば君、サッカー部だったよね。」突然の質問にこくりと頷く。

それをみて彼女は湿布の袋をはいっと渡してきた。
「こういうの慣れっこでしょ?貼るの手伝って貰えないかな?」

いやいやいや、貼るって。僕男だし、女の子の首筋に触れるとか禁忌だろ…。

そう思ったけど、彼女の顔を見ているとどうも断れなかった。

「じゃ、じゃあ僕の方に背中向けて座ってくれる?」仕方がないので手伝うことにした。
彼女は小さくはーいと答えると、僕に背を向けて座り、左手で長い髪の毛をかきあげた。

無防備に晒されるクラスメイトのうなじ。ドキドキしない訳にはいかなかった。

緊張のあまり少し震える手を頑張って抑えて、ゆっくり湿布を首筋にあてる。
冷たいのか、その瞬間彼女は少し体を震わせた。

「良いよ、もっとギュってやっちゃって。」遠慮がちな僕の手つきに満足出来なかったのだろうか、彼女はそう要求してくる。

言われた通りギュっと押すと、彼女の体温が手に伝わってきてこそばゆくなってきた。
「こ、これで大丈夫?」僕がそう聞くと、彼女は
「うん、ありがと」と言い、髪の毛を下ろして、振り替えって微笑んだ。

「それは、どういたしまして。」と言って自分の席に座り直し、改めて回りを見直してみると、みんなの視線が僕(たち)に集中していた。

恥ずかしくなって僕は顔を机に伏せた。

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