射止めたのは…

□第四話
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「巴川さんどうしたの?もしかして黒子に届け物?」



青のTシャツを着て近づいてくる伊月先輩にお辞儀をしてから、


「あの、監督さんはいらっしゃいますか?」

「カントクならいると思うよ?…もしかして昼の話についてわざわざ来てくれたの?」

「明日教室まで来ていただくわけにはいかないと思ったので…」



私がそう言えば伊月先輩は笑いながら、

「そんなこと気にしなくてもよかったのに。カントクが言い出したことだし、言い出すと止まらないから」



まぁ、とりあえず入りなよ。そう言ってドアを軽々と開けた。




…私の力が弱いのでしょうか。
あんな風に軽々と開けられないです。




そんなことを思っていた私は、体育館の中に入ろうとした伊月先輩に慌てて声をかけた。


「あの、私今日は帰ります。やっぱり部活中にお邪魔するわけにはいかないですし…」


監督さんも忙しいと思うし、みなさんもせっかく指導をしてもらえるチャンスを少なくするわけにはいかない。


いつも何時頃に学校に来てるのかさえ教えてもらえれば、私がその時間帯に体育館に来たっていいし…




「監督さんはいつも何時頃に…」


「ちょっと伊月くんっ、そんなとこに突っ立ってなにしてるのっ!」


来ていますか?そう聞こうとしたけれど、体育館の中からした声に消されてしまった。




「あ、ほんとだ。おーい伊月、そんな所でなにしてんだよー」

「やっと来たか。おいっ、さっさと準備しろよっ」


次々と声が聞こえてきて、中には怒ったような声も聞こえてくるのに当の本人は慌てた様子もなく、



「あぁー、今行く」

と一言返してから、



「邪魔だなんて思わないよ。寧ろ巴川さんが良ければ見てって」


そう言って伊月先輩は、図書室で見せた笑顔とは違う表情を浮かべた。


図書室の時は嬉しそうな感じだったけど、今はなんていうか…




優しい、って言うのかな…
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