射止めたのは…
□第七話
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「あ、真澄ちゃーんっ」
友達と向かい合わせでお弁当を食べていると、思いもしなかったお客様が教室の出入り口にいて、こちらに手を振っていた。
突然の上級生の登場に、友達は春巻きを食べる手を止めてしまった。
そんな友達に、ちょっと行ってくるね、と一言かけて席を立つ。
「リコ先輩、こんにちは。えっと…」
「突然来てごめんね。どうしてもお礼を言っておきたくて」
黒子くんから聞いたわ、とリコ先輩はニッコリと笑顔を見せた。
「許可を取ってくれてしかも真澄ちゃん直々に教えてくれるって聞いて。バスケ部一同、凄く感謝してるの。もし断られたらどうしようって思ってたから…」
本当にありがとう、と頭を下げようとするリコ先輩に、慌てて止めに入る。
「私で、大丈夫でしょうか…」
喜んでもらえるのは凄く嬉しい。
でも嬉しいって気持ち以上に不安が強いから…
「みなさんのお力になれるかどうか…、分かりません」
我ながら、弱気な発言をしたと思う。
そんな私の発言をどう思ったのか分からないけれど、
「話をしてくれただけでも十分力になってる」
そう、一言だけ言って、リコ先輩は優しく笑ってくれた。
リコ先輩は日にちと時間、それから場所を確認してから、お昼中にごめんね、と言ってさっきとは違う元気な笑顔を残して帰って行った。