夢(short)

□条件
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「俺のマスク、下げられたらつきあってもいいよ。」

超緊張しながら告白して、言われたのがコレ。
満面の笑みで言われてわけがわからず、口をパクパクしていたら

「ん?もしかして、無理?」
って挑発されるように言われたから、思わず

「そ、そんなことないよっ!いいよ。受けてたとうじゃないの!」
って勢いよく答えてしまった。




まずは正攻法に待機所で真正面に座って会話の途中で手を出してみた。スッと体を後ろに引かれたかと思うと、そのまま手首を掴まれた。

「いったぁい!そんなに強く掴まないでよっ!」

「あのね。いくらなんでもこんなんでやられるわけないでしょ。」

「…。」
そりゃそうだけどさ。まずはどうリアクションするのか確かめたかったんだもん。




その日の夕方、前を歩いているのを見つけた。
気配を消して後ろから近付く。
手を伸ばした瞬間、またもや手首を掴まれた、と思ったら、そのまま背負い投げ。
さすがにあっちも本気じゃなかったから、体をひねって足から着地した。
だから、ま、痛くもかゆくもないのだが。

「確かに気配を消すのはうまいから、ひっかっかる奴もいるとは思うけど…。俺には効果なしだーね。」
そう言うと、カカシはニッコリ笑った。



今度は任務で一緒になった。が。

「任務中は狙わないから安心して。」
早々にこう伝えた。
命に関わるからね。任務に支障をきたすようなことは絶対にしない。
そう言った私を見て、カカシはニッコリ笑うと、

「俺、おまえのそういう真面目なところ好きだよ。」
といって頭を撫でてくれた。
きっと顔は真っ赤だったに違いない。
任務に影響を与えまいとしてたのに、その後の任務のことはほとんど憶えていない。




報告書を提出するカカシを待ち伏せした。
提出を終えて外に出てくる瞬間を狙った。
気配を完全に消し、角を曲がってくるところを影分身で前後挟み打ち。
<やった!マスクに手がかかった!!>
そう思った瞬間、ぼんっと目の前のカカシが消えた。

「いい作戦だったね。でも、最近里内では常に影分身で行動してるんだよねー。」
背後から聞こえた「本体」の声にがっくり肩を落とす。
そんな私の頭をぽんぽんしながら、

「いやー。ここまで俺を追い詰めるのはさすがだーね。」
と言った後、

「じゃ。お疲れ様。」
と右手を上げて去って行った。

悔しい!!あとちょっとなのに!!
カカシの後ろ姿を睨みながら思う。
いろんなところで待ち伏せして、変化して、影分身使って。トラップまで仕掛けたのに!
一体いつになったらっ!そう思った瞬間、ふと考える。
いつになったら、じゃない。いつまでも無理なんじゃないの?
そもそも、私がカカシのマスクを下ろせる日なんて、来るのか?

「…何で気がつかなかったんだろう。」
つまり、これは体のいい断り文句じゃないか。

「バカじゃないの、私。」
今頃気がつくなんて。
からかわれているのか、或いは、ストレートにふるのは悪いとでも思ったのか。
どちらにしろ、そういうことじゃないか。
その晩、思いっきり泣いた。もう諦めようと決めた。





諦めることにしてから数日後、綱手様に呼び出された。
砂での任務を言い渡され、一週間ほど木の葉を離れることになった。

「御意。」
そう返事をして火影室を出る。
あれからカカシには会っていなかった。諦めると決めて、追いかけるのをやめたからだ。
一度自宅に戻って準備をしてから、すぐに砂に向かって発たなくては、と先を急いでいると、前からカカシが歩いてきた。

「よ!なんか久しぶりだーね。」
相変わらずニコニコとさわやかな笑顔だ。

「そうだね。」
久しぶり、と言われて思わず苦笑い。ちょっと前までは毎日どころか一日に何度も顔を突き合わせていたからね。何が楽しいのか、満面の笑みのカカシを見て、深呼吸をする。

「降参。もう、諦めるよ。」

「…またまたぁ。そう言って油断させるつもり?」

「違うよ。」
自嘲気味に笑う私を見て、冗談じゃないと気がついたのだろうか?カカシの顔から笑顔が消えた。

「諦めるよ。すぐに気がつかなくてごめんね。」

「え?」

「じゃ、私、急ぐから。」

「え?あ!おいっ!」
急ぐのは事実だったし、みっともない顔を見せたくなかったから、瞬身でその場から逃げた。
終わった。
そう思った。



任務で一週間里を離れられたのはちょうど良かった。少し気持ちの整理ができた気がした。
報告書を提出して、帰ろうと外に出ると、壁に寄りかかって腕を組むカカシがいた。

「おかえり。」

「…ただいま。」
そのまま前を通り過ぎようとしたら

「飯、食って帰らない?」
って声をかけられた。

「…ごめん。疲れているから、今日はもう帰るよ。」
振り返ってカカシの顔を直視するのは危険だと思ったから、それだけ言うと、立ち去ろうとした。

「待ってよ。」
カカシが私の手首を掴んだ。

「俺、諦めていいって言ってないよ。」
は?何、それ?諦めるのに許可がいるの?信じがたいカカシの発言に反論しようと、振り向いた瞬間、カカシが掴んでいた私の手首を持ち上げた。
と、思ったら、そのまま私の指がカカシのマスクにひっかかる。

「あ。」
私の手がカカシのマスクをさげた。

「だから、おまえの勝ち。」
目の前で起きたことがイマイチ理解できずに呆然とする私のおでこにふにっと柔らかい感触。カカシの唇だと理解するのに、これまた数十秒以上かかった。

「今日からおまえは俺の彼女ね。…聞いてる?」
カカシが私の頭を撫でながら、顔を覗きこむ。

「…いいの?」

「いいよ。」

「嫌じゃないの?」

「嫌じゃないよ。」
嬉しいけど、一体どういうことなのかやっぱり腑に落ちなくて。きっとそれが顔に出ていたんだろう。

「最初はね、すぐに負けるつもりだったんだ。でも、おまえがあまりにいい動きするからさ。つい、本気になっちゃったんだ。
必死で追いかけてくるから、俺も楽しくなっちゃって。…ごめん。」

「もー…。なんだよ、それ…。」
頭突きをするように、カカシの胸に倒れこんでやった。
いろいろ文句は言いたかったが、何から言っていいのかわからなかったのと、そんな私をカカシがギュッと抱きしめてくれたから、

「バカ。」
とだけ言って、私も思いっきりカカシに抱きついた。

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