夢(short 3)

□もらいものとか間違いとか
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「はい。」

「え?」
待機所で座っているといきなり目の前に何かを差し出されて、びっくりして顔を上げるとカカシが缶コーヒーを持って立っていた。

「いらない?」

「え?くれるの?」
そう言って見上げたカカシは無表情。自分で「くれるの?」って聞いたものの、もらえるのが当然という態度もどうなんだと思い、

「いくら?」
って聞くと、カカシの眉間に皺が寄った。

「もらいものだから、いいよ。」
そう言うと、半ば私の手に押し付けるような感じで置いて行かれた缶コーヒーは、まだ熱かった。まだ熱いということは今もらったばっかりと言うことで。
カカシは飲まないのかな、とか、誰にもらったのかな、とか、いろいろ聞きたいことはあったけど、向かいで愛読書を開くカカシにはなぜかそれをさせない雰囲気があったから、私は黙って缶コーヒーを飲むことにした。
改めて缶を見てみれば、私が一番好きなコーヒーだった。


それから数日後。
久々に都合の合う上忍たちで飲み会。乾杯も終わって一通り飲み終わったころ、隣に座っていた誰かが「オレ、便所。」って言ってが立ち上がった。反対を向いてアスマと話してたから顔は見てないけど、たぶん、声はライドウだ。すぐに、代わりに誰かが私の隣に座った。誰かな、と思って横を向くと同時に、目の前にお皿がすっと動いてきた。

「ん?…あ。」
これ、私の大好きな抹茶アイスじゃん!って思ったが、もしかしたら隣に座った人のものかもしれない。そのまま視線をお皿から上げると、横に座っていたのはカカシだった。

「いる?」

「え?」

「アイス。」

「食べていいの?」

「オレのじゃないよ。」

「私、頼んでないけど…。誰か頼んだのかな?」

「こいつらは食わないでしょ。いいんじゃない?早いもの勝ちでしょ。」

「やった!」
へへっと笑ってアイスのお皿を自分の引き寄せると、スプーンを持った。一口食べたところで何となく視線を感じて横を向くと、カカシが見ていた。

「ん?」

「幸せそうだね。」
そう言ったカカシが呆れているような気がして、ちょっと恥ずかしかったけど、

「幸せだよー。」
って言ってさっきよりも大きな一口を口に入れた。



久しぶりに第七班と一緒の任務に就いた。

「オレってば、やっぱ天才だってばよぉ!」
って珍しく活躍したナルトが嬉しそうに話すのを眺めながら里に戻る途中、休憩をすることにした。

「ナルト、さっきからうるさいわよ。」
まだ続くナルトの自画自賛にうんざりしながらサクラちゃんが突っ込むと、

「あれくらいの活躍で騒ぐなんて、よっぽど普段役にたってないってことだよな。」
水を飲み終えたサスケがわざと明後日の方向を見ながらつぶやいた。

「ああぁ?サスケ、今なんて…「はいはい。もういいから。」
サスケに突っかかろうとしたナルトの肩をカカシが掴む。

「ほら。これでも食べて落ち着きなさい。」
カカシがそう言ってみんなの前に手を広げる。

「ん?なんだ?」

「あ。かわいい。」

「…飴か?」
カカシの手のひらには、ビニールで個包装された飴。

「カカシ先生が飴なんて、珍しいですね。」
そう言いながら、サクラちゃんは遠慮なくカカシの手のひらから飴を一つとった。

「あー。これ、美味しいんですよねー。」
と飴を口に運ぶサクラちゃんを横目に、ナルトも飴をとる。全く動く気配のないサスケに

「おまえは甘いのは嫌いだったな。」
とカカシは言った。
そんなみんなをぼんやりとみていると、カカシの手が私の目の前に突き出された。

「あ。ありがとう。」
そう言ってとった飴を見れば、私が大好きなフルーツの飴だった。

「これ、中に入ってるのが美味しいんですよね〜。」
サクラちゃんがそう言うと、

「お。確かに。うめぇな。」
とすでにガリガリとかみ砕いているナルトもご満悦。
そう。ミカンとかイチゴとか、その味のフルーツの果肉のようなものが中に入っててそれが美味しいんだ。

「いつもこんなの持ち歩いているの?」
そもそもカカシだって甘いもの食べないのに、と思って聞いてみると、

「いや。たまたまもらってね。自分じゃ絶対に食べないから持ってきた。」
という返事が返ってきた。
里に戻ると、カカシはみんなに解散を命じた。
報告書はカカシが出してくれるというから、私もそのまま帰ろうとした時だった。

「はい、これ。」
とカカシがポーチから何かを引っ張り出した。

「ん?」
出されたものを受け取ると、さっき食べた飴だった。それも、袋ごと。

「いいの?」

「オレ、食べないし。」

「サクラちゃんにあげればよかったのに。」

「ナルトと取り合いになったりしそうで面倒だからね。」

「…なるほど。でも、これ、実は買ったらちょっと高いんだよ?」

「ま、もらいものだしね。」

「いいのかな?」

「ああ。」

「ありがとう。」
ラッキー!そう思いながら私は家路についた。
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