夢(short 2)
□熱い視線
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ふと視線を感じて顔を上げて待機所内を見回すと、そこには本を読むカカシしかいなかった。
「…。」
おかしいな。見られている気がしたんだけど。
でも、やっぱり待機所には私とカカシしかいない。そして、カカシは身じろぐこともなく読書を続けている。
勘違いだろう。そう思って私は報告書に専念することにした。
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集合場所に集まって仲間が来るのを待っていた。珍しくすでにカカシが到着していた。
ただ、もう一人くるはずの中忍が前の任務で遅れているとかでまだ来ない。
「カカシが待たされるなんて珍しいねー。ちょっとは待たされる側の気持ちがわかった?」
「…。任務で遅れてるんじゃしょうがないでしょ。」
一応拗ねているのか、そっぽを向くカカシを子供みたいだ、なんて思ったあと、ぼんやりと紅葉が始まった里の森林を眺めていた。
と、またそこで視線を感じた。
ぐるっとあたりを見回す。
カカシ以外の気配はない。
カカシはと言えば、さっきの私と同じように紅葉を眺めている。
逆に、私の視線に気が付いたのか、カカシがこっちを向いた。
「何?」
「え?あ、いや…。きれいだよね、紅葉。」
慌ててそう答えると、
「ああ。今年もいい色だ。すぐに冬になるな。」
と、カカシが笑った。
=====
一楽でラーメンを食べようと暖簾をくぐると、先客がいた。
「よ!」
「おっす!」
カカシとナルトだ。
「どうも〜。」
軽く片手をあげて私もカウンターに座る。隣にはナルト。
「えーっと…。醤油1つお願いしまーす。」
「あいよぉ!」
ズルズルっという音がするから横を見れば、ナルトがラーメンをすすっている。
「カカシは?」
「ん?オレはこいつを奢るだけ。」
「あら。カカシが奢るなんて珍しい。雨降りそうだね。」
「おい…。」
「だーろ?でも、ま、今日はまさにオレの活躍あっての任務完了だったってばよ!」
「あら。ナルトの大活躍も珍しい。こりゃ明日は嵐だな。」
「おいっ!」
ケラケラ笑っていると私のラーメンが出来上がった。
「いっただきまーす。」
横でナルトがラーメンをすする音を聞きながら自分も久々の一楽をいただく。
と、そこでまたあの視線を感じた気がした。
「…。」
食べるのを止めて顔を上げる。
カウンターの中の親父さんと看板娘あやめちゃんは私に背を向けて忙しそうにしている。
そのまま横を向くと、ナルトはラーメンと対峙中。カカシはそんなナルトを頬杖をついて眺めている。
と、カカシが私に気が付いた。
「どうした?」
「え?あ、う、ううん。」
視線を感じたなんて言えなくて、私は慌ててラーメンを食べるのを再開した。
=====
それから何度も視線を感じては辺りを見回すことがあった。でも、やっぱり私を見ている人なんていない。
「…。もしかして、私、病気?いや、霊がとりついてるとか…?」
思わずそうつぶやくと、
「え?」
と向かいにいた紅が不思議そうな顔をした。
「え?あ、な、なんでもないよ。ははは…。」
私は慌てて目の前のあんみつにスプーンを突っ込んだ。
紅と別れた後、ブラブラと歩きながら家に向かう。その間も考えるのはあの「視線」。
ふとした瞬間に感じるんだ。でも、あたりを見回すと誰もいない。いや、いなくはないけど、どう考えてもこっちを見ていたとは思えない感じなのだ。
「疲れてるのかなぁ…。」
そうつぶやいた瞬間、
「…マジかよ。」
また感じた「視線」。大きく息を吐いてゆっくりと顔を上げてあたりを見回す。
今度は逆にいろんな人が周りにいるのだが、知らない人ばっかりだ。行き交う人を眺めるが、みんな私の存在なんて気にもしていない様子。
「…マジで精神的にやられてるんじゃ…。」
「よ!」
前方から聞こえた声に顔をあげれば、カカシが向かってきた。
「どうした。暗い顔して。」
「え?あ、ああ。ちょっと疲れてるのかな。」
「大丈夫か?」
「うん。もう帰るから、帰ってさっさと寝るよ。」
「そうか。じゃ、無理するなよ。」
「ありがと。」
去って行くカカシに手を振ると、私は思いっきり頭を振った。
もう考えないつもり、だったのだが。
なーんかひっかかるんだよな…。何か見落としているような?
「うーん…。ん?」
私は思わず立ち止まった。
今まで「視線」を感じた時に唯一共通点があるではないか。そうだ。カカシだ。
必ずカカシが側にいる。で、視線の出どころを探していると、カカシと目が合うのだ。
でも、どうもカカシは私を見ていたとは思えない雰囲気で。
大抵例の愛読書を読んでいるか、ぼーっとしているか。顔を上げてもカカシと目が合うこともないし。
とは言え、私が視線を感じた瞬間を察知して何食わぬ顔をすることができるのもカカシくらいではないか?
いや、でも。犯人がカカシだったとしても、なんで私を見るのか?
用事があるのなら声をかければいいはずだ(っていうか、普通に話しかけてくるし)。
「もしかして、睨まれてるのか…?」
一応あの視線とともに殺気を感じたことはないが…。
「本当にカカシなのかなぁ…。」
見落としていたものに気が付いたものの、やっぱり腑に落ちない私は、とにかくカカシと一緒にいる時は気を付けてみることにした。