Clapping

□赤ずきん
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それから、ナマエはお気に入りの赤いずきんをかぶって、おばあちゃんの家に行った帰り道、ヒソカを呼んで一緒に遊びました。
夏の暑い日も、冬の寒い日も、風邪で寝込んだりしない限り毎日、赤いずきんをかぶり、ヒソカの所へ遊びに行きました。
そして、いつしかナマエはその姿から『赤ずきん』と呼ばれるようになりました。
ヒソカはいつもトランプを持っていて、手品をしたり、トランプタワーを作ってはナマエを楽しませてくれました。

ところが、11歳の過ぎたある日、呼んでもヒソカが来ません。

「ヒーソーカー!あーそーぼー!!」

ナマエはもう1回、大声を出して、呼びました。
しかし、返事がありません。

「ヒソカ…どうしたんだろう…?
せっかく、手品教えてもらおうと、トランプ持ってきたのに…」

来た道を戻ろうかと思いましたが、すぐに諦めるナマエじゃありません。

「ヒーソーカー!!」

と、大声で叫びながら、森の中を歩き始めました。

どれくらい叫んでも、いっこうにヒソカは姿を現しません。
もう、足はクタクタで、喉はカラカラです。
でも、ナマエはヒソカを呼び続けました。
その時です!
ターンと、銃声が森にこだましました。
ナマエは慌てて身を屈めました。
木々の間から銃を持った男が飛び出してきました。

「子ども!?
に、逃げろ、狼が来るぞ!!」

そう言った途端、後ろから狼が男を襲いました。
男は狼に首を噛まれ、息絶えました。
ナマエはガタガタと震え、その光景を見ていました。
今度は自分がやられると思うと、その場を動くこともできません。
しかし、狼はじっと自分を見つめた後、くるりと向きを変え、去って行こうとしました。
その行動を見て、ナマエは気付きました。

「ヒソカ…?」

すると、狼が立ち止まって、ナマエを振り返りました。
ナマエはこの狼がヒソカなんだと確信しました。

「ヒソカなら、私、恐くないよ」

そう言って、狼の傍に行き、血で汚れたその体を抱き締めました。

「おばあちゃん言ってた。
狼が人を殺すのは、私たちがキイチゴを食べるのと同じで仕方のないことだって。
それにヒソカは私を食べないでしょ?」

ナマエは狼に笑いかけました。
すると、狼はナマエの腕の中で、人間に変身しました。

「キミは強い子だね♠」

ヒソカはナマエを抱き締め返しました。

「1つ聞かせてよ。
キミの目の前で人間を殺したのに、ボクを恐れないのはなぜだい?」

ヒソカは不思議そうに首をかしげました。
ナマエはにこりと笑って言いました。

「だって約束したもん。
指切りもしたもん。
だから、信じてた」

そして、ヒソカの顔を見て言いました。

「それに、あの時。
狼がヒソカだとわかったあの時。
私、ほっとしたの。
ヒソカが撃たれなくて良かったってほっとしたの。
狼に食べられるより、ヒソカが死んじゃう方が恐かった」

言い終わった途端、ナマエの目から涙が流れ落ちました。
次から次へと流れ落ちました。

ヒソカは泣きじゃくるナマエを優しく強く抱き締めました。
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