Clapping
□初詣カオス
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ナマエはむくりと起き上がった。
時計は午前10時を指している。
冷気に体を撫でられて、慌てて裏起毛のガウンを羽織る。
これで寒さは少しマシだ。
結局、あの後ヒソカが先に寝ちゃったんだよね。
クスクスと笑って隣で寝ているヒソカの髪に触れる。
柔らかくて指通りのいい赤毛。
ヒソカが目を覚ます気配はない。
「ったく、こっちは次の攻撃がいつくるかヒヤヒヤしてたのに…。
まさかの振り返ったら寝てたってオチね。
ま、かわいい寝顔見れたからチャラにしますか」
無声音で呟いて、ヒソカの寝顔をまじまじと見る。
あまりにも綺麗なので、頬を撫でてみる。
うらやましいんですけど、このツルツルほっぺ。
ズルくない?
しかも、男のくせに色白。
どんなスキンケアしてるんだろう…?
…見てたら、ラクガキしたくなるから、トイレ行こ。
ヒソカの鼻を甘噛みして、ナマエはベッドから下りトイレへと向かった。
てか、よくこのベッドで2人寝れたよね。
シングルだよ、これ。
など、と他のことを考えているナマエは気付いていない。
ヒソカが起きていたことに。
ボクの鼻を甘噛みするなんて、朝っぱらからナマエは大胆だな♠
その意外性がまたいいんだけどね♥
ヒソカがのどの奥で笑っていると、「凍っちゃう、凍っちゃう」の声と共にナマエが廊下を走る音が聞こえた。
ヒソカは笑いを押し殺しながら、寝たフリをする。
「寒い、死ぬ、凍る!」
無声音で叫びながら、ベッドに入り込もうと近付いてきたナマエをベッドへと引きずり込んだ。
「なっ!?」
驚きの声を上げたナマエをガッチリと腕の中に捕らえる。
「おはよう、ナマエ♣
まさか朝っぱらから鼻を甘噛みされるなんて、予想してなかったよ♦」
笑いを含んだヒソカの言葉にナマエはまた驚く。
「起きてたの!?いつから!?」
「甘噛みの少し前♠」
「そっか。でも、ヒソカが先にダウンするとは思わなかったよ」
ナマエがクスクス笑う。
「それは今から続きがしたいってことかな?」
ヒソカもクスクスと笑った。
「え、違うよ!
今したら足腰立たなくなっちゃうよ」
ナマエは慌てて首を振って、「ただでさえ、昨晩は激しかったんだから…」と消えそうな声で続けた。
「キミの体が淫ら過ぎるのが悪い♥」
ヒソカに囁かれて、顔に火が灯る。
「そんなんじゃないよ!
もう、ヒソカのバカ!変態!」
頬を膨らませてプリプリ怒るナマエの耳朶をヒソカの笑い声が打つ。
「もう知らないよーだ!」
舌を出して、ナマエはヒソカの胸に顔を埋めた。
ヒソカは止まりそうにない笑いを抑えながら、ナマエの髪を撫でた。
「ねえ、ヒソカ」
さっきとは違い沈んだ声が飛んできた。
「なんだい?」
「また、すぐ来てくれる?」
ナマエは顔を上げてヒソカを見上げた。
その瞳は不安に揺れている。
その顔を見て、ヒソカは小さく笑みをこぼした。
先ほどの笑みとは違う優しい笑みを。
「安心して、ナマエ♣
ボクが帰る場所はここだ♦
毎日ここに帰ってくるよ♥」
「…それすごく嬉しい」
ポトリポトリと雫が1滴また1滴と、ナマエの頬を滑る。
ヒソカはその雫を指で拭う。
「ごめん。嬉しすぎて、とまらないの。
今すごく幸せで…」
にこりと笑うが涙がとまらない。
ヒソカはナマエを抱き締めて囁く。
「愛してる♠」
「私も愛してる」
ナマエの幸せな嗚咽がヒソカの耳朶を打つ。
が、疲れが残っていたのだろう。
しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
ヒソカもその寝息を聞きながら、眠りについた。