幻惑の蝶
□Episode2
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キルアのフリーズが解けた頃、残った受験者とサトツの一団は地下道を抜け、外に出ていた。
「ここはどこだ?」
ちらほらと聞こえた受験者の疑問にサトツは律儀に答えた。
「ここはヌメーレ湿原。
通称『詐欺師のねぐら』と呼ばれております。
二次試験会場へはここを通らねばなりません。
この湿原には珍奇な生物達が生息しています。
そして、その多くが人間を欺いて、食料にしようとする、狡猾で貪欲な生き物です。
十分注意してついて来て下さい。
騙されると死にますよ。」
受験者の間、緊張の色が伝わる中、サブリナはあくびを漏らす。
と、言っても、所詮は騙すことでしか、人に勝てない獣ってことでしょ。
そんなのよりも、むしろ…。
サブリナは左斜め後方を肩越しに見やる。
その視線の先には、ヒソカがいた。
ヒソカもこちらを見ている。
その顔は何かを我慢しているようだ。
アイツが何か仕掛けてくるかもしれない…。
とりあえず、先頭の方にいよう。
そうすれば、試験官の目もある。
それにしても、なんで、あんなのに目をつけられたんだろ…。
サブリナはため息をついたと同時に、地下道へと通じていた道がシャッターで閉じた。
それは後戻りはできないということと、設定された時間内に地下道から出なければそこで試験終了ということを示唆していた。
「先ほど説明した通り、この湿原の生物は獲物を欺き捕食しようとします。
この特殊な生態系が『詐欺師のねぐら』と呼ばれる所以です。
騙されることのないよう、しっかりと私の後をついて来て下さい」
そう言って、サトツが走り出そうとした時だった。
「ウソだ!!そいつはウソを吐いている!!」
シャッターの陰からボロボロになった男が、よろつきながら出てくる。
「そいつは偽者だ!!
試験官じゃない!
オレが本物の試験官だ!!」
男はサトツを指さしながら言った。
受験者の間にどよめきが瞬時に広まる。
「これを見ろ!!」
男はサトツに似た動物を出しながら続ける。
「こいつはヌメーレ湿原に生息する人面猿!!
人面猿は新鮮な人肉を好む。
しかし、こいつらはとても貧弱だ!
だから、人に化け、言葉巧みに人間を騙しては、他の生物と連携して獲物を食うんだ!
そいつはハンター試験に集まった受験者を一網打尽にする気だぞ!!」
その声が止まった時、ヒュッと何が風を切った。