幻惑の蝶

□Episode10
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ゴンとキルアの案内で、サブリナはあるホテルに来た。
ゴンが目の前の戸をノックする。

「ウイングさん!オレとキルアです!」

ガチャリとドアノブをひねる音とともにドアが開く。
出てきたのは、ボサボサの頭に銀縁の眼鏡の男性だった。
なぜかシャツの片側だけがズボンから出ている。

「やあ、ゴンくん、キルアくん、よく来たね」

男性はニコリと笑って2人を見た。
そして、視線を移してサブリナを見る。
男性と目が合い、サブリナは微笑んだ。

「あなたのことは会長から聞いています。
はじめまして、ウイングです」

「こちらこそ、はじめまして、サブリナです」

サブリナと握手をして、ウイングは3人を部屋の中に入れた。

中では1人の少年が淡々と正拳突きをしていた。
その少年はキルアとゴンに気づくと、顔をパッと明るくした。

「押忍!2人とも来てくれたんッスね」

「うん!オレらも燃えるの方の燃を修行しないといけないから」

ゴンも少年と同じように、笑って頷いた。

「で、そちらの方は?」

少年は首を傾げて、サブリナを見上げた。

「彼女はサブリナ。
彼女も念の修行をしに、ここに来ました。
サブリナさん、この子はズシ。
私の弟子です」

ウイングの紹介が終わった途端、膝を落としてサブリナはズシの頭を撫でた。

「かわいいね。このチクチク感、懐かしい」

何かを思い出して、サブリナはのどでクツクツと笑っている。
ズシは反応に困って、されるがままだ。

「ま、そんなことはさて置き、早速精孔開けてよ」

撫でるのに飽きてズシを抱き締めながら、サブリナはウイングを見上げた。

「まず四大行の説明から」

ホワイトボードに何か書こうとしたウイングにサブリナは声を投げた。

「それ、知ってる。
纏、絶、練、発でしょ?
それぐらい、予習してるよ。
あと、円とか凝とかの応用技も」

得意気にニコリとするサブリナにウイングは「聞きしに勝る勉強家ですね」と、微笑み返した。

「では、こちらに来てくれますか?」

ウイングに呼ばれてサブリナは名残惜しそうに頭を撫でながら、ズシを離した。
そして、鞄を放り投げ、ウイングに背を向け立つ。

「今からあなたの体にオーラを送ります。
しかし、これには」

サブリナはウイングの言葉を遮る。

「リスクを負うんでしょ?
私の場合、この体が死ねば生物兵器に戻るから、リスクは0。
安心して。
勝てないゲームはしない主義だから」

ニヤリと笑うサブリナの笑みは、一瞬にして、全員に『絶対に勝てない』と思わせる魔性の笑みだった。

「それでは始めます。
できるだけ、早くオーラを」

「くどい…。
予習してきたって言ってるでしょ?」

不機嫌な声で言葉を遮って、サブリナはウイングを振り返り、ジロリと睨み付けた。

「…わかりました」

ウイングが頷いたのを見て、サブリナは正面を向いて目を閉じた。
ウイングは集中力を高めて、サブリナにオーラを送った。
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