幻惑の蝶

□Episode10
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その時、膨大な量のオーラがサブリナから湧き出た。
空気が張り詰め、圧迫感がその場にいる全員に襲いかかる。
息を詰まらせながら、全員が驚き、サブリナを見つめる。
ウイングに一抹の不安がよぎる。

もしかしたら、私は………とんでもない怪物を目覚めさせてしまったのかもしれない…。

ウイングはオーラを送るのやめた。
精孔が開いたサブリナからはオーラが湧き続ける。

「温かい…」

そう呟いて、サブリナはオーラを自身に留めることに集中した。
やがて、垂れ流されていたオーラがサブリナを包む。

「纏はこれでいけるかな?」

ニコリと笑って、サブリナはウイングを見た。

これほどのオーラを留めておくには、かなりの技術と集中力が必要。
それをあっさりやってのけるとは…!

ウイングはゴクリと唾を飲み込んだ。

「ええ、完璧です…」

ウイングの答えを聞いたサブリナは次の段階に移行する。

「次は絶!」

そう言い放ったサブリナのオーラが一気に掻き消えた。

「練!」

先程とは比べらものにならない量のオーラがサブリナから噴き出す。
家具や窓がカタカタと鳴り、サブリナのオーラに共鳴するかのようだ。

「そして、発だね〜」

サブリナは一旦オーラをしまい、コップに水をくんで、その上に部屋にあった観葉植物の葉を浮かべた。

「さてと…」

コップを包むように手を添えて、オーラをコップに送ることをイメージする。
サブリナがオーラを送り込んだ瞬間、葉の半分だけが枯れた。

「特質系ってのは確かだけど…」

「うーん、半分だけって…」と首を傾げる。
半分だけ枯れたことに納得がいかない。

「あっ!そうだ!」

サブリナは並べられた観葉植物の中からサボテンを探しだし、その葉を取って、水の上に浮かべた。
そして、もう1度コップにオーラを送った。
すると、半分が枯れ、半分は成長してサボテンとなった。
何か納得したように、ニヤリと笑ってサブリナはバタンと仰向けになった。

「これ、結構疲れる〜」

汗にまみれた顔いっぱいに満面の笑みを浮かべた。

「でも、四大行クリアー!!」

それまでの一部始終を皆、固唾を飲んで見ていた。
たった数分で四大行を全てクリアしてしまったこの女に驚愕と畏怖を隠せない。

この短時間で四大行を制覇するとは…!
念の修行を始めて、数ヶ月経つズシさえこの域に達していない…。
しかも、彼女は知識だけで…。
いや、これが天賦の才…!
戦うためだけに生まれた生物兵器の神髄!

ウイングは背中に氷を詰められたような悪寒に襲われていた。

会長…彼女は……とんでもない怪物ですよ…。

サブリナの精孔を開けてしまったことをウイングは深く後悔した。

何なんだよ…。
オレたちが汗水垂らして、修行してるってのに…。

キルアは悔しさで歯を食い縛った。

すごい…!
さすが、サブリナ!
オレも負けないように修行しなきゃ!

ゴンは顔をキラキラさせて、ぶっ倒れているサブリナを見つめた。

上には上がいるんスッね…。

ズシはガクリと頭(こうべ)を垂れた。

皆が色々な思いを馳せてる中、サブリナは起き上がって胡座(あぐら)をかいた。

「なかなか、疲れるね、これ」

パタパタと手で顔を扇ぎながら、サブリナは疲れた素振りを見せる。

「サブリナ、すごいね!
あんな少しの時間で四大行をクリアしちゃうなんて!」

ゴンが目をランランと輝かせて、サブリナの手を取った。
「まあね」と、サブリナは満更でもない様子。

「それより汗かいたから、シャワー借りてもいいですか?」

汗で額に張り付いた前髪をかき上げながら、ウイングを見た。

「いいですよ。そこを左です」

そう言って、ウイングはシャワー室の方を指差した。

「ありがとう」

サブリナは立ち上がり、シャワー室へと足を向けた。
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