Clapping
□Crimson Crimson Crimson
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だが、自分はナマエを欲しいのではなく、壊したいのでは?
そんなことが脳裏に浮かんで、消えない。
あの屈託のない笑顔を深紅に染めたいのでは?
血溜まりの上を歩いているせいか、動きを止めて真っ赤になったナマエが浮かぶ。
その狂った美しさにゴクリと唾(つば)を飲み込んだ。
頭の中の"キレイ"なナマエを連れてしばらく歩くと、床が白くなった。
血の着いていない白い白い大理石の床。
振り返ると真っ赤な自分の足跡が点々と続いていた。
深紅の足跡と純白の大理石。
相容れないと思った2つの色は、共存しお互いを映えさせている。
まるで、イチゴのショートケーキのよう。
ケーキを思い出すと、さっきのとは別の真っ赤なナマエが浮かんで、また苦笑をこぼした。
そう、ヒソカが欲しかったのは…。
ボクが欲しかったのは、真っ赤に照れたナマエ♠
熟れた果実のようになったナマエが欲しい♥
それにしても、ナマエはどうしてああも美味しそうなんだろう…♣
舌舐めずりをして、深紅のナマエを思い浮かべる。
慣れていない分抵抗するだろうが、それがまた楽しみの1つ。
でも、ナマエがボクの本性を知ったら、きっと驚くだろうな♦
口をパクパクさせて…♠
「ククク♥」と小さく笑って、続きを想像する。
目を白黒させて、それから…。
きっと、怯える…♣
まるで、異形の何かように自分を見るだろう。
慣れているはずなのに、ナマエにそんな顔をされるのは正直辛い。
そんな顔をされるぐらいないなら、いっそのこと…。
いや、ダメだ。
と、思考が行ったり来たり。
らしくもない想いがイカれた奇術師(マジシャン)を襲った。
目的地に着いていたクロロ、他2名は絶もしないでトボトボ歩いてくるヒソカを見た。
その様子に3人はマチの勘が当たったのでは?と、ヒソカのことがほんの、ほんの少し心配になった。
そのままにしておいた方がいいとなんとなく察した3人は、手筈通り"不死鳥の涙"を盗り、ショボくれている奇術師に解散を告げて、美術館を後にした。
後に残された奇術師は、誰もいない美術館を踵を鳴らして歩いた。
2つの顔が消えてくれない。
自分は一体どっちの笑顔が欲しいのか…。
どっち…?
両方欲しいに決まってるじゃないか♦
狂った笑顔もかわいい笑顔も♠
自問自答が続く。
欲しいモノは何でも手に入れてきた。
その分、この案件は無性に腹が立つ。
なぜなら、彼は奇術師。
そして、奇術師には不可能はないのだから。
不思議で真っ赤な深紅の果実。
イカれた奇術師に難問を突きつける。
あなたが欲しいのはどっちの色?
――Crimson Crimson Crimson――
「とにかく、今はナマエに会いたいな♥」