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□戯れ
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廃墟の中で悲鳴がこだまする。
逃げる人影と追う人影。
逃げる人影がつまずいて、転ぶ。
「や、やめてくれえ!!!
金、金ならいくらでもやる…!」
そう言って、怯える男の首が飛ぶ。
まるで、人形の首を取るかのようだ。
「こっちは終わったよ♠」
鮮血を全身に浴びたヒソカは後ろの足音に言った。
「うん、こっちも終わったから、帰ろう」
足音の主はイルミだ。
イルミはニコリともせず、淡々と言う。
「今日の相手もつまらなかったよ♦」
ヒソカはやれやれと肩をすくめる。
「オレは早く仕事が終わって、楽だからいいけど?」
「少しは楽しみたいなあ♣」
クツクツと笑いながら、ヒソカは言った。
すると、何かが動く音がした。
2人は瞬時に臨戦体勢に入る。
「終わったんじゃなかったの?」
イルミが訝しげにヒソカを見る。
「うーん…そのはずなんだけどねえ♠」
楽しそうにヒソカは笑った。
また、物音が聞こえる。
『柱の陰にいる』
口の動きでイルミはヒソカに伝える。
ヒソカはこくりと頷いた。
柱に足音を殺して近づく。
そして、2人は同時に飛び出た。
と、同時に肩の力を抜いた。
そこにいたのは敵ではなかった。
それ以前に、人間ではなかった。
ニャー
と、その獣は一声鳴いた。
「猫?」
イルミが不思議そうにその獣を見た。
「みたいだね♥」
ヒソカが猫を抱き上げる。
猫はゴロゴロと喉を鳴らし、ヒソカの顔に自分の顔を擦りつける。
「くすぐったいなあ♦」
ヒソカは猫の喉を撫でる。
猫は気持ちよさそうに目を細めた。
「ヒソカ、置いていくよ」
その間にイルミはスタスタと歩いていた。
「今、行くよ♣」
そう言って、ヒソカは猫を下ろした。
ニャー
と、名残惜しげに猫が鳴く。
「またね♠」
ヒソカはヒラヒラと手を振った。
しかし、猫はスタスタと歩く2人の後を懸命に追う。
「ついて来てるよ」
「みたいだね♦」
イルミは猫に殺気を放ってみる。
猫は驚いたかのように、立ち止まりじっとイルミを見た。
しかし、イルミが攻撃してこないとわかると、また後を追う。
とうとう廃墟の入口までついて来た。
「こいつ、どうする?殺す?」
イルミが針をかまえる。
「そんなことしたら、可哀想だよ♥」
珍しくヒソカが動物をかばった。
「やけに肩を持つね。たかが猫だよ?」
イルミが不思議そうにヒソカの顔をうかがう。
「うーん、そうだね♣やっぱり、殺そうか♠」
ヒソカは手首を返して、トランプを取り出す。
そして、最後の忠告とばかりに殺気を飛ばした。
しかし、猫は臆することなく、ヒソカの足に擦り寄る。
「なつかれてるね」
イルミのからかいに、ヒソカはムッとしたが、事実、猫はヒソカの脅しにも動じるどころか、ヒソカに擦り寄る有り様だ。
「…仕方ないなあ♦」
ヒソカはそう言うと猫を抱き上げた。
「それ、どうするの?」
イルミの問いにヒソカは意外な言葉を返した。
「ボクがつれて帰るよ♥」
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猫の飼い方わかるの?
奇術師に不可能はないの♠