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□てのひら、あつく
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本日は晴天。
春だと言うのに気温は上がって初夏の陽気だ。
薄手の長袖を来て、ナマエは午後の太陽の下を歩いていた。

「暑いですね」

「確か、今日は暑くなるって予報だったね♠」

隣のヒソカも薄手の長袖。
上に着ていたスプリングコートは荷物へと降格している。

「でも、晴れた日はいいですよね。
暖かくて、散歩には良い感じです」

「おやおや、いつの間に散歩になったのかな?
これから、映画だというのに♣」

クスリと笑うヒソカを見上げて、ナマエも笑う。

「現に今、歩いているじゃないですか」

「そうなったのはキミのせいじゃないか♥」

ヒソカは自分が車を持っているので、それで行こうと誘った。
しかし、「15分ぐらい歩きましょう」と押しきられ、今こうして歩いている。

「だって、何か面白いことがあるかもしれないでしょ?」

ニッコリ笑うナマエに、ヒソカは「そうだね♦」と頷く。

もしかしたら、美味しそうな果実に出会うかもしれないしね♠

綺麗な髪を揺らして歩くナマエの様子は服装とあべこべだ。
黒や白を基調としたクールな服装に、ハイテンションの鼻歌。
そのギャップがかわいかったり、面白かったり。

「ほんと、キミを見てたら飽きないよ♥」

「何か言いましたか?」

ヒソカの3歩先を行く上機嫌のナマエがクルリと振り返った。

「いや、何も言ってないよ♣」

「そうですか。あっ!ケーキ屋さん…♡」

ナマエは斜め前にあったショウウインドウを覗き込んだ。
抹茶スフレにモンブラン、イチゴタルト、ショートケーキ…etc。
そのガラスにヒソカの姿が写った。

「そうだね、ボクはあのガトーショコラが気になるなあ♦」

「私はイチゴのムースが乗ったあれが気になります」

真剣な顔でガラスの中のケーキを睨む。

映画見るのに2000J。夕飯を外で食べると仮定した1000J。
手持ちのお金は4000J。
うーん、どうしよう…。

「帰りに寄るかい?」

「今、財布と相談中です」

深刻な面持ちで答えるナマエに吹き出しながら、ヒソカは「あんまり、ゆっくりしてられないよ♠」と手を引く。
ナマエはケーキに後ろ髪を引かれながら、また歩き出した。
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