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□夢ヲ見タ…
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ナマエは慌てて飛び起きた。
吐いた息は荒く、頭が痛い。

また、あの夢を見た。

病院でラミレスの死体と対面し、今度は場面が飛んで10歳の自分が人の首を跳ねる。
何回、夢の中で泣いたのだろう。

「だから、寝たくなかったのに…」

ぼそりと呟いた声が部屋の闇に溶けた。

人間の体って不便だ。
アルコールごときで寝てしまうなんて…。

ボフッと音を立てて、枕に頭を埋める。
3000万人を殺した罪はまだ拭えないのかと吐いたため息をも闇は飲み込んだ。





ハンター試験以来ずっとこの夢を見続けている。
何度も何度も繰り返させる心の拷問は、前にも受けた。
壊れかけた心は闘うことで保っていた。
"外"の生物や天空闘技場。
本能に染み付いた残酷な衝動が、ここぞとばかりに血を求めた。

振り上げられた剣(つるぎ)はもう下ろしてもらったと思ったに。
また繰り返させるこの夢は、どうやらったら終わるのか。
前は終わるのに数十年かかった。

終わらせたい。でも、死にたくない。
なぜ?
やらないと。
ラミレスがやり残した事を。
全ての理を知る。
それが彼がやり残した事。
やりたがっていた事。
でも、もう終わりたい。静かに眠りたい。

前に一度、飲まず食わずで過ごした事があった。
体力が底を尽き、意識がなくなった。
このまま死ぬのだと思った。
しかし、気が付く自分の体から飢餓感が消えていた。
周りを見渡すと"何もない"マグマの中だった。
熱さなど感じない。
そして、ただ悟った。

ああ、私はマグマの熱エネルギーを食べたのか…。
飲食をしないだけではダメ。
なら、物理的に壊すのはどうだろう?

シズルに協力してもらって、彼女が持てる全ての力で攻撃してもらった。
しかし、ナマエの体はそのエネルギーをも食らった。

「まるで、ウロボロスね」

シズルはそう言って笑った。

「私をマヌケな蛇と一緒にしないでよ」

ブスッと返すが、実際言い当て妙。
ウロボロスとは自分の尾をくわえて環になっている蛇のこと。
そこから、転じて無限を表す。
無限、永遠…それはつまり"オワラナイ"ということ。

「念の制約と誓約じゃ無理かな?」

「念なんてやめときなさいよ。
もし、また、力が同じベクトルを向いたらどうするの?
この前は島1つと3000万人で済んだけど、オーラを完璧に操れるとなると、きっと"箱庭"ごと吹き飛ぶわよ」

すがるように呟いた提案をあっさり却下され、ナマエはますます膨れた。

死ねないなら、生きようと思った。
でも、生きていくのに必要な何かがなかった。
空っぽのまま、大きな何かを置き忘れたまま、ナマエはこの90年生きてきた。
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