Anniversary
□What did he forget?
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とあるマンションのワンフロアに明るい電灯が灯っている。
その電灯の下でナマエは憂鬱な顔をしていた。
「遅い…」
今夜、早く帰って来ることを約束した人がまだ帰っていない。
お風呂は入った。夕食の準備もとうに済ませた。
ナマエは時計を見上げた。
もうすぐ、11時になろうとしている。
やっぱり、こういうイベント事には興味ないのかな?
そう思うと、張り切っていろいろ準備した自分が急にバカらしくなってくる。
この数時間、ずっと相手の心配をしていた胸に切なさが染み込んで、なかなか離れてくれない。
ナマエは足を椅子の上にあげて、膝を抱えた。
「遅い…」
もう一度、呟いてみるが現状は変わらない。
どんなに遅くても、10時には帰って来るヒソカ。
それがこんな日に限って遅い。
何でこんなに遅いのだろうと心配しては、興味がないのかとため息をついた。
抱え込んだ膝に額を押し付ける。
ポケットに入れてあったスマホを取り出してみるが、着信ランプは光っていない。
5回もメールすれば鬱陶しがられるかな…。
ヒソカから連絡がすぐに来ないのもおかしい…。
充電切れ?それとも、何か…。
ヒソカに限ってそれはないよね。
きっと…。
"きっと"が胸に引っかかり、椅子から降りて、コートを羽織った時。
「ただいま♠」
「ヒソカ!?」
慌ててその姿を確認しに、玄関へと走る。
電気のついていない玄関は暗かったが、確かにヒソカはそこにいた。
「どうしたんだい?そんなに慌てて♣」
空気で笑っているのがわかる。
「いや、何でもないよ。おかえり」
いつも通りの素振りに安心してナマエは電気をつけた。
明るい光に照らされて、ヒソカの、血にまみれた姿が浮かび上がった。
それを見て固まったナマエを心配したヒソカがニコリと笑う。
「大丈夫だよ、ナマエ♥
これは遊び相手の血だから♦」
しかし、それが仇になった。
「ヒソカのバカー!!!」
感情のリミッターがぶっ飛んだナマエは油断していたヒソカの懐に飛び込んで、強烈な一撃を食らわす。
ガクリと膝が折れ、ヒソカがその場に倒れた。
「もう知らない!!!」
ナマエはテキトーに靴を履き、走って部屋を出ていった。