Anniversary

□怪異の3月3日
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ドーンという轟音(ごうおん)と共に、地響きがした。
雪が白い塊となって、山を下って行った。

「に、逃げろー!!」

「雪崩だあ!!」

山間の集落に住む人々が蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

「まさか、ウボォーが風邪ひくなんてねえ」

山の天辺でその様子を俯瞰(ふかん)していたナマエがマフラーに口を埋めながら、マチに言った。

「怪我ならあたしが治せるけど、風邪はね…」

苦笑しながら、マチはナマエに応えた。
本来はウボォーギンがビッグバンインパクト【超破壊拳】で雪崩を起こすはずだったのだが、風邪で寝込んでいるため、ナマエが呼び出された。
今日の欠員は、風邪でダウンしているウボォーギンに加え、フランクリン、コルトピ、ボノレノフ、パクノダ、そして、ヒソカだ。

「あいつはバカだから、風邪はひかねえと思ってたぜ」

ガハハハとノブナガが大声で笑った。

「へ〜ぶっじゅ!!!あー、ちくしょう…」

そのノブナガが大きなくしゃみをする。

「ノブナガも風邪ね」

「移すんじゃねーぞ」

フェイタンとフィンクスがノブナガからササッと離れた。

「オレは風邪じゃねえ!!」

「そろそろ頃合いだな。シズク、頼んだぞ」

「OK、任せて」

ノブナガの声と重なったクロロの命令を聞き逃さず、スキーを履いて準備をしていたシズクが斜面を一気に駆け下りた。





集落はすっかり雪に覆われ、倒壊せずに済んだ家の屋根が所々出ている以外何もない。
集落のあった場所に着いたシズクは、デメちゃんを取り出した。

「いくよ、デメちゃん。
半径50q圏内の雪と死体を吸い込め!」

ギョギョギョ〜

デメちゃんはすごい勢いで、雪と死体と化した村人を吸い込んでいく。

デメちゃんで障害物を吸い終わったシズクは閃光弾を打ち上げた。
それを確認したクロロの「行くぞ」を合図にスノーモービルで全員が集落へと向かった。

「ねえ、マチ」

前でスノーモービルを運転するマチにナマエは声をかけた。

「何?ナマエ」

「雪崩なんか起こして大丈夫なの?
お宝、壊れたりしない?」

「さあ、あたしはその辺のことは知らないね。
団長を信じていれば、大丈夫よ」

エンジン音で掻き消されないように、大声で会話する2人の声にもう1つ声が乱入した。

「ここの地方では、雪崩に備えて家宝なんかは全部地下室に保管する習わしがあるんだ」

「へえ〜!そうなんだ!」

シャルナークの解説にナマエは「よかった」と笑う。





元集落に着くや否やクロロの号令で、団員たちは倒壊した家を押し退け、地下室に入ってはお宝を運び出していく。

ある家の地下室で、お宝を集めていたナマエはその奥である物を見つけた。

「うわっ〜!綺麗なお雛様…」

3月3日、桃の節句を明日に控えていたせいか、そこには三段の雛人形が飾られていた。
しかし、薄暗がりでぼうっと浮かんだ人形たちの顔はどこか寂しげだった。

「オヒナサマ?それ、何ね?」

うっとりとした表情で雛人形を見ているナマエにフェイタンが訊ねた。

「お雛様っていうのは、一番上にある女のお人形のことで、正確には女雛って言うの。
んで、これ全体で雛人形。
女の子の健康を祈って、3月3日の桃の節句に飾るんだあ」

懐かしそうに目を細めて笑うナマエは、「ここから出してあげるからね、かわいいお姫様」と、紅の着物の女雛の頬をスッと撫でた。

「よし、いくぞ」

その脇を通って入ってきた、フィンクスとノブナガが雛壇の両端を持って、地上へと続く階段を登っていった。

「丁重に扱ってよ!壊れやすいんだから!」

その後をお宝を抱えたナマエが追った。
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