Clapping
□pioggia
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疑問を持ったのは、いつからだろう?
シトシトと降り注ぐ雨の中、1つの傘に入る2つの人影を追った。
濡れた髪がだらしなく顔に貼り付いて、気持ち悪い。
目の前を行く2つの影もキモチワルイ…。
たまにしか会えなかった。
だけど、それでよかった。
この事実を知るまでは。
態度や表情は何も変わらなかった。
その人は嘘が上手いから。
艶(つや)やかな笑みを湛(たた)える唇が、嘘を吐いてもわからない。
だから、疑問に思ったきっかけがわからない。
ただ漠然と不安に思った。
たまにしか会えないからかもしれないし、その人の家に行ったことがないからかもしれないし、無意識に嘘を吐かれたと思ったのかもしれない。
会えないと偽って、様子を観察したらこの始末。
あまりにも、酷すぎる気がした。
しばらく歩くと、大きな建物の前に着いた。
形やちらほら見える灯りからマンションと推測する。
親しげに別れの挨拶をして小さい方の影がその中に入って行った。
大きい方の影はまた雨の中を歩いて行った。
どうやら、彼の帰る場所はここではないらしい。
また、後を追いかける。
雨脚が強くなってきた。
髪だけじゃなく、服もぐっしょり濡れた。
貼り付いく服は気持ち悪い。
ざわつくこの胸もキモチワルイ…。