幻惑の蝶

□Episode4
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二次試験が終わり、残った受験者が飛行船乗り場に着いた。

「サブリナ、遅いね」

ゴンが心配して呟いた。

「ああ…。
だけど、あいつは強い。
必ず、戻ってくる…」

そうは言ったもののキルアも不安を拭えずにいた。
ネテロが二次試験を通過した受験者に労いの言葉をかけていた。

「二次試験を勝ち抜いた諸君。
次は三次試験が待っておるぞ。
幸い、三次試験の会場まで、ここから距離がある。
その間、ゆるりと休まれよ」

そう締めくくり、受験者が飛行船に乗り込もうとした時だった。
空気が張り詰め、威圧感がその場を飲み込んだのを、その場にいた全員が感じた。

「やれやれ、遅い到着じゃの」

ネテロがそう呟やいたかと思うと、突然、虚空より白が舞い降りた。
途端、辺りに桃の香が広がる。
まるで、周囲の人間を甘い罠に誘うかのようだ。

空間を引き裂くように現れたサブリナは出発した時とは、かけ離れた姿をしていた。
右手には彼女の倍以上はある大きな鎌。
死神を思わせるその刃は、紅く紅く染まっている。
左手にこれまた大きな袋を持っている。
その袋には紅い斑点が散らばっている。
そして、何より彼女自身が紅く彩られていた。
髪に、肌に、ドレスに紅いそれが、白を塗り潰さんとばかりに飛び駆っている。
紅い瞳には憐憫の情を携えている。
その姿は妖艶さを帯び、見る者全てを惹き付けた。
その薄紅色の唇が動く。

「…念能力者の死刑囚256人の首とジャポン原産の抹茶を飛行船出発までに持って来ること。
二次試験の内容はそれであってるよね?」

そう言って、左手にパッと離す。
袋は重力に従い、下へ落ちる。
地面にぶつかった衝撃で首がいくつか袋の外へと飛び出した。
その首はどれも殺されたとは思えない表情を浮かべている。

「どうして、そやつらは笑っておるのじゃ?」

ネテロが怪訝な顔をした。
サブリナは肩をすくめる。

「ちゃんと、宣告したんだよ?
今から死刑を開始するって。
でも、女だからってニヤけてた。
それで、スパッと…」

サブリナは首を切るジャスチャーをする。

「だから、つまんなかった…。
今度はもうちょっと、強いヤツ用意しててよ」

「念能力者と言えど、能力を発動する前はただの人じゃ。
少し待ってやればよかったのにのお」

ネテロは苦笑する。

「油断する方が悪い。
あっ!はいこれ、頼まれてた抹茶」

鞄をあさり、茶葉の入った袋を取りだして、ネテロに投げた。

「ちゃんと、忘れず買ってきたか…」

ネテロは感心したようにその袋を見る。

「で、私を呼び出した用件はこれで終わり?
死刑を執行して、冤罪だったら…。
なんて、ハンター協会の建前のために、私は呼び出されたわけ?
人外の私なら、人の法の外側にいるから、私に死刑を執行させたの?」

サブリナが眉間にしわを寄せる。
その怒りが空気に交わり、重い威圧感を生み出す。
その威圧感に逆らえず、ネテロとヒソカ、そして、もう1人以外、その場にいた全員が膝をつく。

たかがオーラだけで、人に膝をつかせるなんて♦
そして、自らを人外だと言う理由♣
一体、キミは何者なんだい?

ヒソカが珍しく表情を固くした。
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