幻惑の蝶

□Episode6
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『三次試験はここ、トリックタワーの攻略です。
皆さんはこの塔を降りて下さい。
制限時間は72時間です』

飛行船を降りた場所は高い塔の天辺だった。
空を貫くように建てられたその塔は、バベルの塔を思わせる。

「しつもーん!」

大きく手を上げた女に全員の注目が集まる。

「飛び降りてもいいの?」

『あなたはダメです、サブリナさん。
ここから、ちゃんと下まで降りて下さい。
わかっていると、思いますが、塔を破壊するのもダメですよ』

彼女の考えを読んでいたかのように、注意される。

「ちえっ、つまんないの」

そう言うと、サブリナは鞄からスマートフォンとイヤホンを取り出して、音楽を聴き始めた。
周囲の人々はその姿に驚いていた。
昨日は17、8歳ぐらいだったサブリナが、今は25歳ぐらいに見える。
背も少し伸びているようだ。
服装は至ってシンプル。
ジーンズに白のYシャツ。
その上から黒のカーディガンを着ている。
靴は黒のローファーを履いていて、白い髪はポニーテールにされている。

『そ、それから…』

マイクの音声から動揺しているのがわかる。

『会長がもしワシが20歳だったら、お主はワシの告白を受けてくれるか?と、訊いておりますが…』

「えー、無理。
だって、20歳のあんただったら、きっとこう言う『誰がこんなペタンコと付き合うかよ!』ってね」

クスクス笑いながら、サブリナは答えた。

「しかも、お互い、計りごとが好きだから、常に腹の探りあいしてると思うなあ。
それはそれでそそられるけど、腹の探りあいなら、今やってるレベルで十分楽しい。
むしろ、日常的な腹の探りあいは疲れるだけだから、パス!」

そう言うと、サブリナの姿が消えた。
しかし、声だけがどこからか響く。

「あー、受験者のみんな、1つ忠告。
床に可動式の下へ降りられる扉がある。
でも、1度使われたら2度と開かない形式。
早く入らないと、他の誰かにとられちゃうよ」

みんな、弾き出されたように扉を探し始めた。

「おい!そこはオレが見つけたんだ!!」

「違う、オレだ!」

塔の頂上は蜂の巣をつついたかのような騒ぎになっている。
もうすでに、扉の中へ入ったサブリナはその喧騒を聞いて、やれやれと肩をすくめた。

「突拍子もない質問するんじゃねえよ、タヌキジジイ」

そう呟いて、部屋を見渡す。
そこにはもう2人の来客があった。
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