幻惑の蝶

□Episode10
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昼下がり。
時間はゆるりと流れる。
柔らかな日射しの中、歩く人々の間を縫うように2人の少年が走っていた。

「ゴン!待てよ!」

黒髪の少年の後を銀色の髪を揺らしながら少年が追う。

「待てないよ!
早くウイングさんの所に行きたいんだもん!
キルア、早く早く!」

ニコリと笑って黒髪の少年ゴンが振り返る。

「ったく…」

銀髪の少年キルアは苦笑し、ゴンの隣に並ぶ。

「相変わらず、目標定めると一直線だよな…」

「うん!!」

キルアの呆れた声を意に介さず、ゴンは笑顔で頷いた。
と、その時。

「なあ、姉ちゃん。
オレらにちょっと恵んでくれよ」

「オレら、女と遊ぶ金がねーんだよ。
そうか姉ちゃんがオレらと遊んでくれよ」

「どっちもイヤに決まってんでしょ?
今、忙しいからどっか消えてよ」

「大人しく言うこと聞いた方が身のためだぜ」

路地裏から聞こえた複数の声に、ゴンは目標を切り換えた。

「ゴン!関わんな!」

キルアが制止の声をかけた時にはゴンは路地裏に飛び込んでいた。

「って、聞いてるわけないか…」

肩をすくめてキルアも路地裏に入った。

飛び込んだ路地裏には5人の男が黒髪の女性を取り囲んでいた。

「何やってんだ!その人を離せ!」

ゴンの怒った声に、男たちが一斉に振り返った。

「子どもはお家に帰んな」

「そうそう、関わると怪我するぜ」

男たちは相手が子どもだとわかるとニヤニヤと笑い、「シッシッ」と手を振る。

「怪我するのは、おっさんたちの方だぜ」

遅れて来たキルアは肉体操作によって尖らせた爪をちらつかせる。
その様に男たちは一瞬驚いたが、すぐに表情が憤怒に変わった。

「ガキのくせにふざけんな!」

「ぶっ殺すぞ!」

男たちの表情が変わったのを見て、2人は戦闘態勢をとる。
2人の男が2人に殴りかからんと拳を振り上げた。
残りは女に言うこと聞かせようとナイフや銃を取り出した。

キルアたちに襲いかかった男たちは勝利を確信していたが、2人にあっさりとやられてしまう。
いや、あっさりとやられたのは、この2人だけではなかった。
情けない声を出しながら、3人の男が崩れ落ちた。

「やれやれ、とんだ災難だよ、まったく…」

パンパンと手を払いながら、女は2人を振り返った。

「ありがとうね、キルア、ゴン」

ニコリと笑うその女性に2人は疑問符を浮かべた。

「えっと…どちら様?」

「てか、何でオレらの名前知ってるわけ?」

怪訝な顔する2人に女はショックを受けたようだ。
がくりと項垂れている。

「やっぱ、わかんないか…。
私、サブリナ。
もう1回ゼノに電話した方がいい?」

困ったように笑う女のその言葉は、キルアとゴンに一次試験のあの出来事を思い出させた。
そして、女の言葉が真実だと知る。

「え、え、えっーーー!!!?」

「嘘だろ…?」

驚きを隠せない2人に女は笑った。

「正真正銘、私はサブリナだよ。
少し話をしたいから、とりあえず場所変えよっか」

白髪は黒髪に、紅い瞳は漆黒の双眸に、陶器のような肌は象牙色になっている。
また、服装も主に白がメインだったのが黒に変わっている。
黒色のパーカー、デニムのショートパンツに黒のニーソックス。
靴は無難にスニーカーだ。
しかし、例の鞄とチョーカーは変わらない。
すっかり様変わりしたサブリナに驚きを隠せない2人。
サブリナはフリーズしている2人の手を引いて路地裏を出た。
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