幻惑の蝶

□Episode20
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ヒソカの腕でぐったりとしたサブリナを見て、ファスコは心底驚いたが、ヒソカから事情を聞くや否やソファにサブリナを寝かせるように指示した。

さてと、彼にはちょっとお仕置きが必要かな♠

サブリナをソファに寝かせて立ち上がったその時。

「っ!!!?」

まるで、自分の数倍も大きい怪物に押さえられているような重圧を感じた。
辛うじて立っているが、そこから動けそうもない。

この感じ…!

ヒソカはこの重圧に既知感があった。

これはあの時のサブリナのオーラに似ている…♣

顔を歪めながら、ヒソカは数ヵ月前の記憶を探る。
二次試験が終わって、飛行船に乗り込む前に起こったちょっとしたサプライズ。
だから、これが誰のオーラかはすぐにわかった。
そして、ヒソカの脳裏に浮かんだのは、敗北の2文字。

あの時の重圧とは比べ物にならない…!

「くっ…!!!」

さらに、増えた重圧にヒソカは膝を着いた。
見れば、カウンターの向こうにいたファスコがいない。
気配はあるので、どうやら、自分同様に膝を着いているようだ。

ホント、キミの周りは面白い人が多いね…♥

うっすらと苦笑を浮かべた時、重圧が解けた。
肺に流れてくる空気が、額に浮かぶ汗が伝える。
次元が違うと。

しかし、ヒソカの心は欲情で満ちていた。

「クックックッ…♦面白いオモチャを見つけたよ♠」

恍惚(こうこつ)に染まる黄色い瞳で舌舐めずりをするヒソカを見て、ファスコは悪寒を隠せなかった。

なんて、男だ…。
大抵の人間はすくみあがって、何もできなくなる。
私(わたくし)はこのオーラに慣れるのに、20年を費やした…。
良くも悪くも、この男は底が知れない…!

ヒソカはシズルのオーラに敗北を感じていたのは事実。
が、超えられないわけではないと確信している!

下の階から上がってくるオーラとこの階に広がるオーラはよく似ている。
勝利しか求めない強者の、闘いを愛する狂者の、不吉で重いオーラ。
それは闘争本能の深淵。

ぐわんぐわんする頭を傾けて、サブリナはヒソカを見て、シズルが来るであろう扉を見た。

シズル、わかってるよね?
ヒソカとゴンはラミレスに近しいモノがある。
私たちを戦闘不能にできた唯一の人間に。
あっ、そっか…。

サブリナは再び上を向いた。
天井を見ているだけなのに、胃がムカムカして気持ちが悪い。
吐き気を抑えるために、つばを飲み込む。

わかってるから、こんな風に宣戦布告しんだ…。
今より強くなって、私を負かしてみなさい!って、とこかな?
シズルらしいや…。

サブリナは小さく笑みを浮かべて、目を閉じた。
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