a lethal dose of toxicant
□a drop
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ドサッ
鈍い音とともに人だった肉塊が壁と擦れながら、崩れ落ちる。
その肉塊の額には、煌めく小さな刃が深々と刺さっている。
「任務完了」
私は足を壁につき、ナイフを死体から引き抜き、その勢いのまま、ナイフを後ろへと投げつけた。
後ろに何者かの気配を感じたから。
腰のホルダーから、もう1本ナイフを取り出す。
2本とも毒つきのナイフ。
かすれば命はない。
私はナイフを構え、振り返り、そして―――ほっと胸を撫で下ろした。
「なんだ、ヒソカか」
先程投げたナイフを眺めながら、にこりと笑っているヒソカがいた。
私は壁にもたれて、小さく息をついた。
「ククククク♠
2ヶ月ぶりだね、ハクレン♥
相変わらず、キミは感度がいいねえ♣
絶の意味ないじゃないか♦」
「こういうことしてるからね」
私は死体を差しながら、肩をすくめた。
ヒソカは楽しそうに笑いながら、ナイフを弄んでいる。
「ところで、なんの用?」
ナイフを片手に私は醒めた目でヒソカを見据えた。
彼がわざわざ会いに来たということは、私と殺り合うためか、あるいは……。
「様子を見に来たんだよ♠
キミが元気にしてるかどうか、心配だったから♣」
ヒソカはこっちまで歩み寄って、「はいどうぞ♦」と持っていたナイフを返してくれた。
「どうも」と受け取って、私はそれについた血をハンカチで拭い、ホルダーに納めた。
「私は変わりないよ。そっちは?」
ヒソカは私の顔の隣に片腕をついて、私を閉じ込めながら、言った。
「ボクはキミが不足して死にそう♥」
唇が優しく降ってきた。
どうやら、用件はもう1つの方らしい。
侵入してきたヒソカの舌に応えながら、私はナイフをホルダーに納めた。
私とヒソカはこういうことをする関係だ。
ヒソカはフラッと現れて、私と数日過ごすとまたどこかに行ってしまう。
彼氏彼女というわけではない。
そう呼ぶには、あまりにもお粗末で危険を孕(はら)んだ関係だ。
ヒソカのキスに酔っていると、スマホが鳴ったので、チュッとリップ音をさせて唇を離した。
ポケットから取り出し通話をタッチして、スマホを耳に当てる。
「もちろん、終わった。じゃあね、イルミ」
話は短く畳んで、スマホをポケットに入れた。
「まだイルミの所にいるのかい?」
「うん。仕事がもらえて、お風呂もご飯もあるからね」
「他には誰から仕事をもらうのかな?」
薄ら笑みを浮かべながら、ヒソカがキスをしてきた。
「クロロから」
キスの間に答える。
「ふーん♠」
ヒソカはどこか不満そうだ。
また唇が降ってくる。
角度を変えて、何度も何度も…。
まるで、私を咎めるように。
「これから、食事なんてどうだい?」
キスの間にヒソカが言った。
その口から漏れた吐息が熱い。
「午前2時に開いてるお店があるの?」
キスの間に聞き返した。
私の活動時間は主に深夜。
そんな時間帯に開いている店があるなら、ぜひとも教えてほしい。
「もちろん♣」
キスをやめたヒソカがにこりと笑った。
「ボクがシェフのハクレン専用のレストラン♥」
ヒソカにぎゅっと抱き締められたかと思うと、横抱きにされた。
「歩けるんですけど」
私は唇を尖らせた。
「キミの照れ顔を久しぶりに見たくて♦
それには、これが1番♠」
真上から見下ろされ、私はため息をついた。
「ヒソカにはかなわないよ」
その呟きを聞いたのか、ヒソカはニヤリと笑った。
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