a lethal dose of toxicant

□three drops
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3日3晩、ハクレンは高熱に犯され続けた。
4日目の朝。

「だいぶ、下がったようだね♣」

ボクはハクレンの額に手を当てて言った。

「おかげさまで」

ベッドの上のハクレン。
その声は少し気だるげだった。

「そろそろ、キミの名前が知りたいんだけど、教えてくれるかい?」

「人に名前を訊く前にまず、自分が名乗るべきじゃない?」

ベッドの隣に腰を据えたボクを見つめるハクレンは、出会った時から変わらず、感情をほとんど表に出さない。
口を閉ざすハクレンにボクは肩をすくめた。

「…わかったよ、ボクはヒソカ♦キミは?」

「ハクレン」

「へえ♠かわいい名前だね♥」

「そんなことより、ヒソカの目的が知りたい」

ハクレンは必要なことだけを口にする。

「ボクの目的の前にキミのことを話してよ♣」

ボクが殺気を向けたけれど、ハクレンは何一つ顔色を変えない。

「なら、話さなくてもいい。
ただ、あなたは私を果実だと言った。
あなたが私をどんな果実にしたいのかわからないと、私はあなたが望むものとは全く違うものになる可能性がある。
それでもいいなら、話さなくていい」

「じゃあ、おやすみ」とハクレンはボクに背を向けた。
そんなの当然、面白くない。

「ふーん♦なら、今、ここでキミを殺そうか♠」

ボクは少し血がにじむ程度にハクレンの首にトランプを突きつけた。
肩越しにボクを見やるハクレンの瞳があの瞳になる。
ボクの性(さが)がぐらりと首をもたげる。だけど、その瞳は一瞬にして光をなくした。

「好きにすればいい。
私は本来、あの晩あなたに殺されているはずだった。
それをあなたが生かした。
私の命はあなたが握っている。
生かすも殺すも、そうあなた次第」

ハクレンはもう一度「好きにすればいい」と言って、ボクの方を向いた。
ボクの頭で計算が行われる。

ハクレンを今殺せば、本当に骨折り損♣
だったら…♦

「…キミはほんとに賢い子だね♠」

ボクは感嘆の息をついた。
「どうも」と言うハクレンの表情は変わらない。

「ボクの趣味は強い奴と戦うこと♥
あの晩のキミを見て、育てば強くなると確信したんだよ♣
だから、生かした♦」

ボクの答えを聞いたハクレンは静かに目を閉じた。

「………………信じろと?」

少しの沈黙のあとに返ってきた言葉。
その開いた瞳はあの激しさを湛えていた。

「それはキミが判断することだよ♠」

にこりと笑うと、ハクレンは静かに「そうね」と言って、また目を閉じた。

「………わかった、賭けてみる」

目を開いて、ボクを真っ直ぐ見るハクレンの激しい瞳。

ああ、いい…♣
キミはほんとに美味しそうだ♥

「あなたの言葉に賭けてみる。
ただ、放置されたら、上手く育たないと思う。
私、運動は苦手だから」

「わかったよ♦
それはこれからみっちり教えてあげる♥
体の方はもういいのかい?」

「まだ、本調子ではないけど、日常生活ぐらいはできる」

ハクレンは体を起こして、人形のような笑みをこぼす。

「だったら、少し出かけよう♠」

「イヤだと言ったら?」

「強制的に連れて行く♣」

ボクがそう答えるとハクレンは小さくため息をついて、ベッドを降りた。

「服は?」

ダボダボのバスローブを揺らしながらハクレンは服を要求する。

「こっちだよ♥」

ボクの後ろを大きなバスローブを引きずりながらついてくるハクレン。
ボクは部屋の端っこにあるクローゼットを開けた。
そこには4日前に買っておいた女物の服がずらりとかかっている。

「全部、キミのだから、好きなのをどうぞ♦」

ボクはクローゼットの前から退いて、ハクレンにその中身を見せた。
その目が一瞬見開かれたけれど、すぐに渋い顔に変わる。
そのままの顔でハクレンは服を見ていく。
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